2006年12月11日

仄明るい沼の底から 第4回

グレイシーよりあなたを

作・沼尻つた子


<旭鷲山関引退に寄せて>
鬢付けの油おとして飛びたてば両国の空はモンゴルの青 (沼尻つた子)


いじめの待つ校舎へ通った 下敷きにクラッシュギャルズの切り抜き秘めて


WWWA世界王座の赤ベルト腹帯にするジャガー横田よ


最強の遺伝子なんかいりません グレイシーよりあなたを落とす


柔道着の匂い嗅ぐ時つくづくと息子を産んだと思うのでしょう


高架下に咲いたちいさな菫だろうダンプ松本の二重瞼は


神聖なる女人禁制の土俵へと牝牛を百頭放ちてみたし


クリスマス相撲部の彼が受け取らぬ手編みのモヘアのピンクのまわし


縁日で掬い残された水風船 故郷の海に浮かぶKONISHIKI


血まみれのマウスピースのように吐く噛みしめ続けた最後のことば

タイトルと選・笹 公人

お題:「格闘技」
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2006年11月17日

仄明るい沼の底から 第3回

イライザのイラは・・・

作・沼尻つた子


「おじゃる丸」(犬丸りんさんによせて)
のう電ボ 照らしてたもれその尻でひかりの消えた月光町を 

あのひとを背中に乗せてツッキーが沈んだ後のみずうみの波


「キャンディキャンディ」
棘草(いらくさ)に嫉妬をからめる縦ロール イライザのイラはイライラのイラ


「ヤッターマン」
今週のビックリドッキリメカの如く妊婦の腹から出でよ赤子ら


「風の谷のナウシカ」
虫愛ずる姫君の記憶もたぬ吾 深夜の厨(くりや)でゴの字を潰す


「チキチキマシーン猛レース」
JAFを呼ぶ前にとりあえず石器人ばりに叩こうエンスト車体


「タッチ」
新体操ボールをあやつるレオタード 手玉に取るってこういうことか


「ふたりはプリキュア」
悪を討つ強い女に憧れる娘の未来に田中真紀子が


タイトルと選・笹 公人

お題:「アニメ」
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2006年09月21日

仄明るい沼の底から 第2回

楊貴妃の酒

作・沼尻つた子


新橋のガード下にも王子様は来るのよ白い麒麟に乗って 


空ジョッキ八つ転がしまどろんでヤマタノオロチと酌み交そうか


交差点に陽炎は立ち 萎れゆく供花へカップ酒が寄りそう


なまごろしがいちばん嫌い マティーニのオリーブの芯つらぬくピック


花の無い果実と書かれた無花果(いちじく)酒を寡婦と呼ばれる吾が購う


始発まで鯨の如く呑むひとの傍で泣きたし吾はスナメリ 


ジッパー下ろしウィスキー噴くカサブランカ・ダンディ課長にセクハラ訴状


杏露酒みみたぶのうらへすりこんで昂ぶる吾に楊貴妃の香


たぷたぷの金色(こんじき)の腑をさすりあい笑おう恵比寿っ腹と名づけて


つぼ八の由来の薀蓄もはじめてのように聞いてる きみと来たから 


鬼娘ラムが差しだすカクテルの名は雷門の電氣ブランぞ


八月のサッポロでその意味を知る 一番星の拓(ひら)きたる空


タイトルと選・笹 公人

お題:「酒」
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2006年08月11日

仄明るい沼の底から 第1回

どぜうすくいでつかまえて

作・沼尻つた子


おもわれているほど清らかな瞳じゃなくて こぼす黒真珠

竜のように横たわる男の顎の下なでて逆鱗ねむらせておく

やどかりの別荘として砂浜に置く食べかけのクリームコロネ

まだ恋を知らない海女の腰巻の奥にひそんだ磯巾着よ

脚もがれ詰まった紅い身ひきぬかれねぶられる蟹を羨む吾は

鰻の肝ふたりで吸った夏の夜 奪いあうため補いあった

口もとは微笑んでたけど赤かった目を忘れないウーパールーパー

海老天のしっぽも残さぬひとだった 転居先不明の賀状の朱印

にちようび白いひらめの縁側にあなたと座って海を見ましょう

血の赤が最上級なら左胸へ 君に贈られた珊瑚ブローチ

虹鱒になれない鱒の涙にも似た小雨ふる7月の朝

じゃこのなかの小海老をよりわけるように君は私をみつけてくれた

鯛よりも鯉の輝く卓につき海なき県の花嫁になる

シザーハンズになり果て抱(いだ)きあえぬ夢 ふたりで蟹味噌啜りし夜の

真夜中に漕ぐ自転車のライトへと宿る提灯鮟鱇の霊

月のない夜に歩けば深海の魚の尾鰭が頬をかすめて

オスどうし愛をこめあう青い池の軟体生物をエロイカという

炙りスルメ丸まりゆけば晩年のいかりや長介の演技をおもう

お見合いで趣味を聞かれて披露する一子相伝のどぜうすくいを

あまくとけるけどなまぐさい季節です私の春は牡丹海老色

河豚刺しの絵皿に透けるしたごころ 襖の向こうの緋の絹布団

八本の腕と脚とをからませた ふたりでひとつの真蛸のように

噛み切れないつながったままのイカソーメン 削除できない最後のメール

一億年かけて炎になれる雪 プランクトンは海底に降る



タイトルと選・笹 公人

お題:「魚介類(海の生き物)」
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