2012年02月01日

かんなのうた 第16回


四月の海へ

作・かんな


木蓮のような日傘を傾けて少女は春の終わりを歩く



残るのはハマボウフウと六月の雨と止まったままの時計と



早すぎる春の別れに薄紅のスイートピーはふるえ続ける



花びらの形に涙は切りとられ四月の海に向かうのでしょう



色褪せる押し花のごと思い出の輪郭だけが今は残って



タイトルと選・笹公人

お題「花」
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2011年03月02日

かんなのうた 第15回

冬のシャトル

作・かんな


アルプスにマウスピースが転がって吹奏楽部の夏も終わって


料理部が家庭科室を抜け出して泡立てにゆく8月の雲


活動の時間が終わりパレットに美術部員がしまう夕暮れ


天文部のプラネタリウムに虫喰いの超新星があらわれて春


終わりのない夏がはじまり帰宅部の二人黙ってぶらんこを漕ぐ


アベ先輩の張り巡らした結界で陰陽道部に入部者はなし


雪の日のボトルメールは遠泳部副キャプテンから「しあわせです」と


砂浜が波にとけてしまっても遠泳部員の午睡はつづく


校庭にユニフォームを着た君がいてスポットライトのような日溜まり


地球へとシャトルは還り冬の日のバドミントン部の部室に眠る



お題「部活動」

タイトルと選・笹 公人
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2010年10月17日

かんなのうた 第14回

蛹のふりして

作・かんな


デクレッシェンドマークを9月に書き込んで蝉の最終楽章を聴く


ナナフシのようなる君を見失う炎天下の歩行者天国


駅舎にはみの虫だけがぶら下がり何処かへ行ける切符を探す


蜩の羽が舗道に落ちてきてその向こうには秋風が吹く


6才の記憶の中にはさまれた紋白蝶のちぎられた羽


本当は伝えたくない事だから伝書でんでん虫に託して


窮屈な制服を着てもう少し蛹のふりをしたい三月


おもいでを思い出せなくなり冬の虫取り網で真水を掬う


そこだけに時は流れる蟻たちに夏の骸がはこばれてゆく


虫かごを空っぽにした夕暮れにまだ夏の陽の匂いがのこる


くもの糸で繋いだ電話 伝えたいはずの言葉がこぼれてしまう


一緒にはもう歩けない行列の蟻を一匹だけ捕まえる



タイトルと選・笹公人

お題「虫」
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かんなのうた 第13回

黒い螺旋

作・かんな


夕立に溶けたのだろう公園の緑電話は姿を消した


秋の夜の雨音を聴くためにある酒屋の脇の公衆電話


下宿屋のピンク電話は知っている守れなかった約束のこと


受話器から伸びる螺旋は電話魔のDNAに繋がっている


子が巣立ち一人になって電話機の親機と子機を並べて暮らす


受話器からこぼれ続けるクレイジーソルトのような声に埋もれて


廃校の内線1番あの春の卒業式の歌が聞こえる


鳴りかけて鳴り止む電話まっ黒なショールが肩にふわりとかかる


無言電話をかけたいほどの夜がありウォッカの瓶を凍らせておく


夏空に吸い込まれたい午後があり携帯電話の電源を切る


霧雨につつまれながらネコ達が集会をする電話ボックス


誰でもいい声を聞きたい夜がありリカちゃん電話の3番を押す



タイトルと選・笹公人

お題「電話」
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2010年03月18日

かんなのうた 第12回

あの夏の紙石鹸

作・かんな


あの夏の匂いを放つ引き出しの紙石鹸のケースを開く


錆びついた線路に石を置いたこと咎めるような風に吹かれて


靴底の小石と共に言いたくて言えないことを振り落とす朝


川底の石踏みしめて歩くごと十五の君の揺らぐ六月


失ってゆく事をしるポスターの石野真子には八重歯があって


十月の野原が見える忘れ物みたいな形の石を拾えば



タイトルと選・笹 公人

お題「石」
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かんなのうた 第11回

3月の人体模型

作・かんな


セルロイド人形を抱きおかっぱの祖母は五歳の夏の中へと


百体のリカちゃん人形並べられどの体にも空洞がある


さようなら、3月の風は理科室の人体模型の胸を吹き抜け


のびのびと両手をひろげ廃村の田圃の案山子が朽ちてゆく秋


着ぐるみのジッパーを閉めまた時給800円のヒーローとなる


ぬいぐるみ作家の部屋の幾百の眼に睨まれて動けない夜


少年が右足首に眠る夜ナナちゃん人形光を放つ


抱き人形のパンヤほぐせばほろほろと子供の頃の夢がこぼれる



タイトルと選・笹 公人

お題「人形・ぬいぐるみ」
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かんなのうた 第10回

猫のなる木

作・かんな


四つ辻で猫と自転車ひく僕と制服の君が混ざりあう春


君はまた猫だった日を思い出すネイルサロンの扉を開き


この部屋に君は帰ってこないから猫のなる木を花屋で探す


灰色の仔猫並べば春の日の植物となり光りはじめる


十月の高い空へと猫は飛ぶ、魚の名のつく雲広がれば


晩秋のベンチに座る老人は仔猫のような日溜まりを抱き


散らばった五線譜の上に老猫はト音記号のように丸まる


街角の猫が減るたび夕暮れは闇の方へと傾いてゆく


よろず屋の招き猫の眼光る朝ダム湖へ村は静かに沈む


老人はグレーの猫を抱きかかえアタゴオル行きの列車を探す


ご主人様お呼びですかと猫耳をつけたハクション大魔王来る


黒猫のタンゴタンゴと針は飛び真っ赤な靴は踊り続ける


なめ猫のレターセットは色褪せて「二十年後の私」へ届く


中1の英語ノートに書きこんだgの形に仔猫は眠る



タイトルと選・笹 公人

お題「猫」
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2009年09月06日

かんなのうた 第9回

星砂の棺

作・かんな


砂浜にビキニの花を咲かすためイヴは真っ赤な林檎をかじる


海からのバスのシートに思い出のように砂粒こぼれていたり


バスクリンマリンブルーの湯の中にビキニなど着ぬ身を沈めゆく


ただ海を見ていただけの百年を古灯台は静かに語る


防波堤離れて歩くいつまでも梅雨の明けない海の灰色


海の家停車時間は五分ですバナナボートの通過待ちです


地下ラボの液体クロマトグラフィーで正しく海であるか調べる


海行きの最終電車は走りゆく電気クラゲの光を集め


海からの風が吹く時えころじぃえころじぃって風車は廻る


帆船のゆるい航跡追いかけて消えてしまった白いクレヨン


あの海が忘れられないアラフォーの赤名リカから便りが届く


七月の笹舟きらら流れだす天の川から続く海へと


星砂は硝子の壜を棺とし海に還れる日を待ち続け


海の歌うたい続けて男らの皮膚の一部は短パンになる


夕立の海の家にて寝転べば水音ばかり吾にのしかかる


灼熱の砂を踏みしめあの夏は恋する人魚であったと思う


夏空に遊泳禁止サイレンが空襲警報みたいに響く



タイトルと選・笹公人

お題「海」
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2009年08月06日

かんなのうた 第8回

ぷよぷよの降る夜

作・かんな



永遠に四番はバース、ファミスタの時間はあの日止まったままで



また夜がやってきたのをオンラインRPGの星空で知る



ラスボスの潜むダンジョン旧校舎の音楽室に入口がある



そう確かに約束をした「ぷよぷよが降りしきる夜お逢いしましょう」



山積みの名付け本から選びだす勇者に一番強い名前を



たまごっちの電池は切れて静けさが満ちてくる午後の無人島へと



四六時中あなたが触れてくれるならwiiリモコンになったっていい



春の野にゲームウォッチは忘れられドンキーコングは微睡みの中



新しいクエストを受け旅に出るスナフキンまた戻って来てね




タイトルと選・笹公人

お題「ゲーム」
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2009年06月25日

かんなのうた 第7回

ローカル線と冷凍みかん

作・かんな


キャラメルのおまけの箱に詰まってる夢を落としてしまったのです


暗号を送る相手を探しつつパスタを食べる窓際の席


夕暮れのローカル線に乗り込んで一人で食べる冷凍みかん


腹立ちをセロリにかえて混ぜあわす野菜ジュースをさあ召し上がれ


ミルフィーユみたいに重ねてきた時は真冬のカフェでほろほろ崩れ


くっついたセイロの隅の蕎麦のよう私を放っておいてください


どうしてもわかりあえない事はある、静岡人はイルカを食べる


とけていくソフトクリーム後ろにも前にも進めぬ僕たちがいる


迷う事ばかり多くて はじかみはどこまでかじればいいのだろうか




タイトルと選・笹公人

お題「食べ物」
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