2010年11月04日

AKB48・北原里英さん「文学少女道」


sasa-7.gif突然ですが、11月9日(火)に行われる
細野晴臣さん主催の
「デイジーワールドの集い」
に、宇宙ヤング(笹公人&HIDE-AKI)&ゲストボーカル・カホリ(ゲリラチャン
として出演させていただく運びとなりました。

kanta_10.gifおめでとうございます!!
なんでまた?

sasa-7.gif細野さんと立ち話をさせて頂いた時に、何かの話の流れで
YMOの曲に勝手に歌詞をつけて歌ってるんですよと言いましたら、
「じゃ、やってよ」ということになりまして。

kanta_07.gif凄い展開!
sasa-6.gifということで、神様の前で、下手くそな歌を精一杯歌います。 われながらこの厚顔と度胸には呆れるけどね。 自分にとっては御前試合なので、めちゃくちゃ緊張しています。 完全に前座のあたため役なんですけどね。

もうひとつ。
<11月11日(木)発売の
「ヤングジャンプ」(集英社)
の「きたりえ」ことAKB48の北原里英さんの連載「文学少女道」で、
きたりえさんに短歌を教えている
怒涛のドキュメントが掲載されます!


var_20101104205436.jpg
家庭教師みたいになってますが……。北原さんと僕。

kanta_10.gifついに!

sasa-7.gif北原白秋と同じ苗字なんで期待してたんだけど、
こちらの予想以上にセンスのある人でしたよ。

kanta_07.gifどんな風に?

sasa-6.gif実作に入る前の短歌鑑賞のコーナーで、

砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている (俵万智)

の歌を取り上げて、
「なぜ卵サンドが気になってるんだと思う?」
と聞いたら、

「夏でしょ? 卵サンドが腐ってたから」

と平然と答えてね。
この子の感性は凄い……!
と思いましたよ。

kanta_06.gifそれは新しい解答例ですね!

sasa-5.gifふつうであれば、
彼と譲り合ったとか、あんまり食べたらはしたなく見えるから我慢したとか、彼が卵サンドが嫌いなんじゃないか?と心配したとか、
そういう答えが返ってくるんだけど、
北原さんのは、コロンブスの卵的な回答だと思いましたよ。
卵だけに。

kanta_10.gifなるほど!
歌はどんな感じですか?

sasa-7.gif4首だけ上げるとすると、これ。


親友の祖父の友達が創業者ココイチのカレー故郷の味 


軍服のあなたは5cm浮いている私は気になり爆レス送る



かけじくを通して見える戦乱を背中で受け止め心で弔う


屋敷跡青白き君に恋をして調べてみれば松平定信


※1首目はお国自慢(?)で、
2首目はAKB劇場に出たという地縛霊(お祓い済みとのこと)を詠んだ歌。
「レス」とはAKB用語で、ステージ上のメンバーから目線がくること。


kanta_07.gif同じくAKBの小林香菜さんの時とは違って、
ちゃんとした型に沿った作品になってますね。
しかもおもしろい!

sasa-7.gifでしょ。
他の歌もおもしろいので、ぜひ読んでみてください!!
北原さんの詳しい経歴を読むと、作品を2倍楽しめるかもしれません。
北原さんにはぜひこれからも短歌を詠み続けていってほしいなぁ、と思いました。

kanta_10.gif師範のお墨付きが出ました!

sasa-4.gifということで、よろしく哀愁☆
posted by www.sasatanka.com at 20:46| Comment(3) | TrackBack(0) | 特別企画・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月13日

開設4周年記念特別企画

というわけで、
遅ればせながら4周年記念企画です!!

遅いよ!!

いや〜この作業、
「総評」の何倍も時間がかかりました。
向こう岸が近くに見えるから泳いでみたら、実はめちゃくちゃ遠くて、
途中で引き返すに引き返せなくなって溺れそうになりながらも
必死で泣きながら泳ぎきった……
そんな心境です。

わかるような、わからないような……。

マイペースな人間と見られがちな笹師範ですが、
今回は背中にプレッシャーを感じていたのですよ。

そうでしょうねぇ。これだけ待たせれば。

壁際に寝返り打って背中でプレッシャーを感じていたんですよ。

往年のジュリーか!

募集期間にコメント欄を眺めているときは凄く楽しかったのですが、
まさかこんな試練が待ち受けていたとは……。

う〜ん、わかります。

票数と票を入れた人の名前と選んだ人の選評コメントの一部をご紹介します。

今回の企画、39人の方が参加してくれました。
お忙しいなか参加してくださったみなさん、
本当にありがとうございました!!
大変だったと思います。
メッセージもありがたく読ませて頂きました。
感謝を込めて、票が入った作者一人一人に
紹介文か歌へのコメントを書かせて頂きました。

数え切れない歌の中からたった4首を選ぶという企画で
自分の歌が選ばれたみなさん、おめでとうございます!
このうれしさをバネにして、
ますますいい歌をつくってわれわれを楽しませてほしいです。

念のため書いておきますが、
票がたくさん入ったからといって、
それが優れた歌であるとはかぎりません。
たとえば歌会では0票だった歌がのちに「秀歌」と呼ばれるようになるなんてことはザラにあります。
なので、自分の作品に誰からも票が入らなかったからといって、
落ち込む必要はまったくありません。
笹師範・選で予選を通過したというだけで最高じゃないですか。
入選したならなおさらです。

自分で言いますか……。

ちなみに僕は歌会で師匠の岡井隆先生の1票があれば、
それだけで満足だったけどね。
(岡井先生が選んだからいい歌というわけではありませんが)
話を戻しまして、
僕が考える「いい歌」とは、
「解説」がないと一般人がわからないというような歌ではなく、
人々に記憶され、愛誦され続ける歌です(狙ってつくれるものではありません)。
そういう歌は、長い時間をかけてたくさんの人の目(短歌をやっていない人の目も含む)を通過して、
ようやく見えてくるものだと思います。

歌会で高得点をとったからいい歌だとか、
賞をとったからいい歌だとか、
有名な歌人に褒められたからいい歌だとか、
そういうものではありません。
あちこちで賞賛を浴びた歌であっても
時間が経ってから、あれは何だったのか……?
となるケースもしばしば見受けられます。

極端な話、石川啄木が何か賞をとりましたか?
賞をとろうがとるまいが、誰に褒められようが貶されようが、
「いい歌はいい」のです。そして残っていくのです。
もちろん「賞」は実力がなければとれませんが、半分は運です。
なので、みなさんには、そういったうわべの評価に惑わされない
ゆるぎない価値基準を持ってほしいと願っています。

いいものもある! 悪いものもある!

スネークマンショーか!

ちょっと矛盾をはらんだ複雑な話になってしまいましたが、
秀歌の定義というのは、
そのくらいあやふやで難しいものだと思います。
それはともかくとして、
自分のつくった歌が誰かの心に残って、
たまに思い出して口ずさんでもらえたり、引用してもらえたりする。
それだけでも歌をつくった甲斐があったというものでしょう。
それだけでも十分素晴らしいことではないでしょうか。

今回の企画は、笹師範以外の人に
自分の作品がどのように評価されているのかを
客観的に知る絶好の機会だったと思います。

選評コメントも、予想以上にしっかりしていて頼もしかったです。
玄人の目を持った人と一般人の目を持った人
の両方が参加してくれて、
バランス感が絶妙だったと思います。
こういう場はなかなかないと思います。
ただ、『笹公人の念力短歌トレーニング』(扶桑社)に掲載された歌が選ばれる率が高かったのですが、それは仕方がないです。
そういうものです。活字になった歌は強いのです。

ぜひこの貴重なデータを参考にして
(きっと何かを得られるはずです)、
ますます楽しい短歌ライフを送っていただきたいと願っています。

では、まいります!

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ダントツで票を集めたのは、
笹井宏之さんの作品でした。
21人(39人中)から票が入りました。
天国の笹井くんも喜んでいることでしょう。
笹井くんは、「笹短歌ドットコム」の歴史を語る上で
絶対に欠かすことのできない存在です。


廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは 
【笹井宏之】

4票(西巻 真、そう蛸、穂ノ木芽央、小林ちい)


さすらいの蜂蜜売りは知っている 馬場さんが欅だったことを 
【笹井宏之】

3票(異能兄弟、たみ、あきえもん)

異能兄弟さんのコメント
「ジャイアント馬場の風貌だけでなく、その人柄も見事にとらえています。
僕たちはどこかで馬場さんのことをおもしろおかしく見ているような
ところがあったんじゃないかと思うんですけど、それだから詠い出しの
「さすらいの蜂蜜売りは知っている」というフレーズがより心に響いて来ます。
この歌を読むと、なぜか春のひだまりにいるような
あたたかさと幸福な心地に満たされて大好きです。」



「スラムダンク」
しあわせのかたちは春の日溜まりの安西先生ではないかしら
【笹井宏之】 

2票(富田林薫、文月郁葉)

文月郁葉さんのコメント
「ときどきふっと思い出して、心が温まるお歌です。
安西先生が日向ぼっこしている情景が目に浮かびます。」


マンボウのようにヨーロッパの人が長椅子を立ち上がって消えた
【笹井宏之】 

2票(鶴太屋、イマイ)

鶴太屋さんのコメント
「これは素晴らしい思考の角度を持った作品です。「マンボウのように」という直喩の掛かり具合、
「ヨーロッパの人」という言葉遣い、真似できませんね。リズムも実験的で、一種の短詩の感があります。
しかし音数的には短歌になっていて斬新だと思いますね。」


「ONE PIECE」
ゆくあてのない旅をする人々へ麦藁帽のキーホルダーを
【笹井宏之】

1票(岡本雅哉)


酒屋からファミリーマートへ変わっても日暮れの窓は果実酒の色
【笹井宏之】 

1票(みうらしんじ)

みうらさんのコメント
「夕暮れ時のコンビニの、
コンビニなのになぜかノスタルジックな風景が浮かんできて好きです。」


雪の降るみなもに全砲身を向けしずかに錆びてゆくガンタンク
【笹井宏之】

1票(虫武一俊)

虫武さんのコメント
「笹井さんの歌は好きなものが多いのですが、
「念力短歌トレーニング」を読んだときに最初に印象に残ったのがこの歌でした。
雪の降る水辺にガンタンクが錆びていく静けさに目が向く、
心が向いていく感覚を私も追い求めたいと思っています。」


雨になるゆめをみていた シャンパンを冷蔵庫深くにねむらせて
【笹井宏之】 

1票(小野伊都子)


ひとしれず海の底へと落とされた大王烏賊のなみだを思う
【笹井宏之】 

1票(酒井景二朗)


もらい泣きしてくれそうなひととみる映画の海がやたらきれいだ 
【笹井宏之】 

1票(地球人)


真っ白になりたいときはiPod miniへ転送した風を聴く
【笹井宏之】 

1票(きたぱらあさみ)

きたぱらさんのコメント
「笹井さんの歌はどれもすばらしいと思いますが、とくにこの歌が印象に残りました。
「真っ白」「風」という詩的な単語に、
「iPod mini」という無機質さを混ぜているところがなんともいえず好きです。」


目の奥に黄砂のけぶる土地があり雨を、君の雨を待っている
【笹井宏之】

1票(はせがわゆづ)


ひゅうざあと波打つきわの平家蟹 小嶋さんたらこんなところに
【笹井宏之】

1票(宮田ふゆこ)


グリズリーに跳ねあげられた紅鮭の片方の眼に映る夕虹
【笹井宏之】
 
1票(ユメバク)


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次に11人から票が入りました
殿堂入り投稿者の異能兄弟さんの作品です。
異能兄弟さんは、伊波虎英という名前で
「短歌人」という結社でも活躍中です。
電話ボックスの歌は最高得票数を記録しました。


公園に電話ボックス舞い降りてひそひそ声の母のはつ恋
【異能兄弟】

5票(猫丘ひこ乃、みうらしんじ、あきえもん、やすたけまり、イマイ)

みうらさんのコメントです。
「電話ボックスがUFOみたいに舞い降りてくるという上の句と、
母が初恋相手にひそひそ声で話してるという下の句とのギャップがうまく調和して、
見事に映像が浮かんできます。」


見事、最高得票を記録した異能兄弟さんには
賞品をお贈りします!

賞品

『連句遊戯』 笹公人・和田誠/著
予定税込価格:1,890円
発売予定日:2010年7月上旬
発売:(株)白水社

可能であれば、和田さんと僕の両方のサインをつけます。

異能兄弟さん、おめでとうございます!!


ジャイアント馬場に食らった蛙(かわず)掛け級の絶望 空を見つめる 
【異能兄弟】

1票(岡本雅哉)

岡本さんのコメント
「……この一首は、小学校時代に児童館のマットの上でプロレスにあけくれた自分にとって外せない一首でした。
想像するだに絶望してしまいます。でも空は青く澄み渡って美しそう!」


死ぬまえにシーラカンスのシーフードカレーを父は食いたいらしい 
【異能兄弟】 

1票(富田林薫)


ちなみにこの歌は、小池光さんの

死ぬまへに孔雀をくはむと言ひ出でし大雪の夜の父を怖るる 
(小池光)

という有名な歌のパロディーです。


二万匹うなぎを食えば乗り移る六十代の斎藤茂吉 
【異能兄弟】
 
1票(瑞紀)


カップ酒に溺れて死ぬる蟻もいてお盆の墓地は暮れてゆくなり 
【異能兄弟】
 
1票(宮田ふゆこ)

宮田さんのコメント
「死とか墓地とか入っているのにちっとも暗くなくて、
牧歌的なやさしさがあって、大好きです。
読み終わったあとに余韻がある短歌だと思います。」


バイアグラを祖父はハブ酒で流し込みギンギンギラギラ夕日が沈む 
【異能兄弟】 

1票(そう蛸)

そう蛸さんのコメント
「熱帯夜にむかう南国の夕日に照らされた赤焼けた老人の、
蛇の脂でひかる唇を思うと、胸焼けがします。」


卓上のゴディバの箱に姉の文字 < どくいり きけん たべたら しぬで 
【異能兄弟】

1票(穂ノ木芽央)

穂ノ木芽央さんのコメント
「あの事件をこんなにほほえましい風景にしてしまう落差。」


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異能兄弟さんと同じく11人から票が入った
殿堂入りホヤホヤの
酒井景二朗さんの作品です。

酒井作品は変態性の高い作風ゆえに、
笹師範の偏った好みではないかと心配していたのですが、
予想以上に幅広い支持を集めていたので、どこかほっとするものがありました。


だからつてそこでワープはないだらう カフェに獨人の秋の淋しさ 
【酒井景二郎】

2票(魚虎、虫武一俊)


この水で傷を洗へばいいんですね 二度確かめてシャツを脱ぎ去る 
【酒井景二郎】
 
1票(おはぎ)


ゼビウスの轟音響く空の下農業はやりづらいみたいだ 
【酒井景二朗】 

1票(富田林薫)


悲しみに沈むおまへの脊柱にカリフォルニアをなすりつけたい
【酒井景二郎】

1票(沼尻つた子)


一齊に飛び立つ鳩の眞ん中にただ清らかな君の眼がある
【酒井景二朗】 

1票(高松紗都子)


有明の冷凍倉庫借り切つてさあ語らうぢやないか未來を
【酒井景二郎】 

1票(宮田ふゆこ)


ピューと吹く!ジャガーな氣分 青春のけものみちからまだ出られない
【酒井景二郎】 

1票(山城秀之)


言い出せない悔しさなどは喩えればサザエの奥にある苦い水 
【酒井景二郎】 

1票(たみ)


君と僕のがさつく指を磨り合はせ水族館を暗くしてやる
【酒井景二郎】

1票(蜂谷希一)


夕されば格鬪村の謎祭金剛力士像を煮て喰ふ
【酒井景二朗】 

1票(鶴太屋)

鶴太屋さんのコメント
「これは最初読んだとき、衝撃を受けた作品でぼくの記憶に残っています。
このころから酒井さんの作品には注目していたのかな。
酒井さんのものとしてはベストではないにしろ、
発想の尋常でなさがまさしくぼくの詩心を撃ちました。」


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9人から票が入った殿堂入り投稿者の
松本響さんです。
完成度の高い作品が多いです。
松本さんの復帰を師範もみなさんも待ち望んでいます!


公園で君の時間を盗んでるルパンの足のような鉄棒 
【松本響】 

4票(山田炬燵、異能兄弟、小野伊都子、やすたけまり)


かまぼこと言われて食べた消しゴムはほんのり鯛の味がしました
【松本響】 

1票(猫丘ひこ乃)

猫丘さんのコメント
「ほんのり鯛の味がしました」というところに
その歌の中の主人公の持つ素直さと明るさとユーモアが際立っていました。」


只という文字はテレビのあり方をからだを張って教えてくれる
【松本響】 

1票(酒井景二朗)


ぺヤングの湯切りが下手な僕だからいつもあなたを泣かせてしまう
【松本響】

1票(高橋徹平)


土星では高値取引されていて伐採される電信柱
【松本響】 

1票(そう蛸)


火と酒を操りながらキッチンにサラマンダーが棲みついている
【松本響】 

1票(鶴太屋)

鶴太屋さんのコメント
「これも完璧。メタファーともとれますが、ぼくとしては一種の幻視として受け止めたいです。
松本さんの作品としては「ルパンの足」が人気があるようですが、
こちらは少し理に落ちている感があります。
無理かもしれませんが、松本さんには復帰して貰いたいです。」


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6人から票が入りました
二代目殿堂入り投稿者の鶴太屋さんです。
笹短歌ドットコムきっての文学通の貫禄を見せつけてくれました。
選評もお見事でした。


フリスクのぎつしり填まつてゐる朝は異星の貨幣のごときしあはせ
【鶴太屋】

2票(あきえもん、穂ノ木芽央)

穂ノ木芽央さんのコメント
「「異国」ではなく「異星の貨幣」がいいです。
この回のとき自分もフリスクで投稿してて頭を抱えた覚えが……」


嬰児くるみて一反木綿の耐ふる冬遍路の鈴に夢まで凍てて 
【鶴太屋】 

1票(山田炬燵)

山田さんのコメントです。
「正直完全には読解できていません。
ただ妖怪の一反木綿にくるまれている嬰児は泣いているのでしょうか?
笑っているのでしょうか?色々と想像力をかきたてられる短歌です。」


白堊の修道院(モナステリオ)ひとりギター弾く男の影に接吻の尼僧
【鶴太屋】 

1票(帯一 鐘信)


飢ゑ充たすとて石ねぶれども舌寒し クヌート・ハムスン忌の紫雲英田(げんげだ)
【鶴太屋】 

1票(ユメバク)


昼餐の胃袋を匍匐前進する隊員想ひ啖(くら)ふレバニラ
【鶴太屋】 

1票(沼尻つた子)


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同じく6人から票が入りました
おなじみ富田林薫さんの作品です。

富田林さんの代表作

ガンヲタに卒業はない 永遠にマチルダ中尉は僕の上官 
(富田林薫)

は、J−WAVE時代の投稿作品だったのですが、
これがもし4年以内の作品に入っていたとしたら
もっと多くの票を集めていたでしょう。


どこまでもいてつく街にいだかれて白いしろい冷蔵庫としてくらす 
【富田林薫】 

1票(山田炬燵)

山田炬燵さんのコメントです。
「冷蔵庫の短歌といえばまず私は島田幸典さんの、たましいを預けるように梨を置く冷蔵庫あさく闇をふふみて、
という短歌が思いつくの(冷蔵庫の短歌はもっとたくさんあると思いますが)ですが
富田林薫さんの短歌もしかり冷蔵庫というのは食料として殺された動物や刈り取られた野菜を入れるがゆえに
逆に表現として清浄なものへと昇華されたとき一層短歌として美しく輝くのではないかと思いました。」


きまぐれに自分に向けて発射したロケットパンチの痛み知る夜
【富田林薫】 

1票(みうらしんじ)


こがらしが飛び出しそうな本棚に 一冊の春を差し込む
【富田林薫】  

1票(台所のキフジン)


それは傷ついたホワイトベースの欠片 ア・バオア・クーに降り積もる雪
【富田林薫】 

1票(瑞紀)


おごそかに秘密基地宣言をする 僕たちのセイタカアワダチソウ 
【富田林薫】 

1票(たみ)

たみさんのコメント
「お題にふさわしく郷愁を誘う歌、しかも少しユーモラスなところが好きです。
お気に入りベスト1の歌です。」


今宵まで夢見る少女でいさせてと抱きしめている牛乳石鹸
【富田林薫】 

1票(山城秀之)


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6人から票が入りました
小野伊都子さんの作品です。
小野さんは女性からの支持率が高いです。


ばあちゃんに禁止されてたスライムの緑に夏を閉じこめてゆく
【小野伊都子】 

1票(きたぱらあさみ)


病院は紙ひこうきを飛ばす場所 ハロー神様お元気ですか 
【小野伊都子】

1票(たみ)


走るのをやめてしまった足元に石と光と花びらがある
【小野伊都子】 

1票(高松紗都子)

高松さんのコメント
「足元にきれいに配置されたものが色々なことを象徴しているようです。
小野さんの歌、心ひかれるものが多かったです。」


割れそうな恋の卵を温めていちから育ててみたい春です
【小野伊都子】 

1票(はせがわゆづ)


ささくれた息子の心を包むようにロールキャベツをきっちりと巻く
【小野伊都子】

1票(てこな)

てこなさんのコメント
「小野さんのやさしい歌が大好きです。下の句、ふんわりとつつむような料理ではなく、
「きっちり巻く」としたところに、逆に愛情を感じました。」


野良猫の声で歌ったあのひとのスローバラードが風に紛れて 
【小野伊都子さん】 

1票(穂ノ木芽央)

これはキヨシロー短歌の名作でしょう。

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5人から票が入りました
瑞紀さんの作品です。
瑞紀さんは白石瑞紀という名前で、
短歌結社「塔」で活躍中です。
最初から上手な人でした。


転居先不明で戻りし郵便のさみしさ纏うスペースデブリ
【瑞紀】

1票(魚虎)


「降参」のメールに笑みはひろがりて春の勝鬨橋を渡りぬ 
【瑞紀】

1票(西巻 真)


少年の夏を溶かしてゐるゆゑに黄金(きん)に光らむたんぽぽの酒
【瑞紀】

1票(猫丘ひこ乃)


異形の子なれば勝者となるために水の匂いをかぎつつ進む
【瑞紀】 

1票(田中落下傘)


春の夜の時計屋が言うさあどうぞ好きな時間をお持ちください  
【瑞紀】

1票(異能兄弟)

異能兄弟さんのコメント
「ブラッドベリの小説を下敷きにした「たんぽぽのお酒」の歌にも惹かれましたが、
「好きな時間をお持ちください」と洒落たことを言う時計屋の店主が登場するこちらの歌を……。
今までの時間をリセットし、心機一転新たに始められるような
気持ちにさせてくれるところが「春」というお題にもぴったりです。」


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4人から票が入りました
初代殿堂入り投稿者・あきえもんさんの作品です。
あきえもんさんは僕の周囲にもファンが多いですよ。


我が恋は哀しきことにいつの日もグレコローマンスタイルでした
【あきえもん】 

2票(山口ヤスヨ、富田林薫)


ポジティブになれる 温水洋一が俳優目指した日々を思えば
【あきえもん】 

1票(宮田ふゆこ)

宮田さんのコメント
「とにかく何度もこの歌を思い出して、ポジティブな気持ちになったので、
個人的にとても大切な歌です。」


プリキュアをもう見ていない八時半 好きな子はいるか訊ねたくなる
【あきえもんさん】 

1票(てこな)

てこなさんのコメント
「深く共感しました。
ユーモアある作品が多いあきえもんさんですが、こういう母親目線の歌をもっと読みたいです。」


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4人から票が入りました
殿堂入り投稿者の
かんな(佐田やよい)さんです。
「笹短歌ドットコム」のホームランバッター的存在です。


キャンディを夢見た頃は遠くなりコンシーラーでそばかすを消す
【佐田やよい】

2票(山口ヤスヨ、てこな)

てこなさんのコメント
「納得の一首。
この歌は、いつか、短歌講座でクイズに出したいと思います。「キャンディ」を隠して穴埋め問題にして…。


目覚めれば柴門ふみと脱ぎ捨てたストッキングがあるだけの部屋
【かんな】 

1票(岡本雅哉)

岡本雅哉さんのコメントです。
「……バブル世代のただ中に青春を送った僕らには柴門ふみとトレンディードラマがあったことを
この一首でほろ苦く思いだしました。でも実際はツルモク独身寮が近かったです(笑)。」


あぜ道で摘みとり食べたヘビ苺 あの子の名前を思い出せない
【かんな】 

1首(山城秀之)


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4人から票が入りました
殿堂入り投稿者の沼尻つた子さんの作品です。
沼尻さんは現在「塔」という短歌結社で活躍中です。
いろんなコンテストで入賞しまくっているので、
投稿短歌の世界ではおそらく有名人でしょう。


一億年かけて炎になれる雪 プランクトンは海底に降る
【沼尻つた子】 

2票(岡本雅哉、高松紗都子)

高松さんのコメント
「上句にしびれました。スケールの大きさ。美しさ。ほんとうに素敵な歌だと思います。」


いじめの待つ校舎へ通った 下敷きにクラッシュギャルズの切り抜き秘めて
【沼尻つた子】 

1票(山口ヤスヨ)


巨人戦延長のため結末がとぎれた録画みたいな失恋
【沼尻つた子】 

1票(きたぱらあさみ)


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4人から票が入りました
はせがわゆづさんの作品です。
おそらく閲覧のみの人の間でも根強いファンがいるはず。
淡いポエジーが魅力です。


淡いこもれびからおちた誰も知らないかみさまのまばたきの音
【はせがわゆづ】 

1票(西巻 真)


真新しい私になってく日曜日コインランドリーのひなたの匂い
【はせがわゆづ】 

1票(小野伊都子)

小野さんのコメント
「師範も書かれたように、ゆづさんの歌に漂う幸福感は揺るがず
読むひともしあわせにする力があります。
その代表的な歌として、忘れられません。」


晴れた朝でしたあなたが砂糖菓子みたいに笑んでた春のはじまり
【はせがわゆづ】

1票(地球人)


明日はもうないふたりです 橙に染まってく街でさよならをした
【はせがわゆづ】 

1票(山城秀之)


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4人から票が入りました
最大級の会員数を誇る短歌結社「コスモス」で早くも頭角をあらわしている
てこな(城戸てこな)さんです。


先端から赤く変わってゆくイチゴ 白い部分を彼は求めた
【てこな】 

1票(帯一 鐘信)
 

本当のことを話すわ浜名湖でうそはうなぎになってゆくから
【てこな】 

1票(みうらしんじ)


やってくと決めたの地蔵に笠ぜんぶ捧げてしまうようなあなたと 
【てこな】 

1票(文月郁葉)


茶畑の上吹き抜ける風のように目には見えないみどりいろがすき 
【てこな】 

1票(イマイ)


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4人から票が入りました
宮田ふゆ子さんの作品です。
ジッタリン・ジンとサンドイッチの歌は名作だと思います。
ぜひこれからも短歌を続けていってほしいです。


捨てないでいるオルゴール ジッタリン・ジンとこわれた音をたてても【宮田ふゆこ】

2票(山口ヤスヨ、やすたけまり)


高く高くトムが重ねるサンドイッチ それが私のアメリカでした 
【宮田ふゆこ】 

1票(西巻 真)


何も期待しないでくれと無果汁のメロンソーダの緑はきれい
【宮田ふゆこ】 

1票(小野伊都子)

小野さんのコメントです。
「色のお題でこの題材の切り取り方は
本当に見事で、やられたと思いました。
比喩が比喩で終わらない歌は
何度読んでもいい歌ですね。」

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3人から票が入りました
おなじみ松木秀さんです。
松木さんは「現代歌人協会賞」という大きな賞(らしい)を
受賞している本格派の歌人です。
これからも「笹短歌ドットコム」で遊んでほしいです。


鉄筋にリサイクルされるUFOという身も蓋もなさもSFとして 
【松木 秀】 

1票(山田炬燵)

山田さんのコメント
「実際にどこかの星でufoが鉄筋にリサイクルされているにちがいないと
確信を持たせていただきました。」


波平がカツオ殺害「いつまでも成長しないのにカッとなり」
【松木 秀】

1票(虫武一俊)


「酒鬼薔薇聖斗事件」
(虚しさ÷14(歳)=支配あまり苦)
6743÷14=481あまり9と猟奇事件も割られて終わり 
【松木 秀】 

1票(きたぱらあさみ)

きたぱらさんのコメント
「一目で「うわっ」って思ってしまいました。
発想も、「割られて終わり」という現代社会を表現した感じもとにかくすごいなっと感じました。
数式のなかにかくされた14歳の狂気が見えるようです。
トラウマになりそうな歌です。」

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3人から票が入りました
深森未青さんの作品です。
ホラー作家としても高名な深森(桐生祐狩)さんは、
短歌では、「日月」という結社で活躍中です。


骨なべて集まるといふ海洞に波はピヤノを組み立てをらむ
【深森未青】 

1票(魚虎)


島となり軍艦となり島となる千年生くる魚(いを)は知らずも
【深森未青】 

1票(ユメバク)


タクシーがすつと止まりてつまらなし洗い髪にて立つ墓地前は
【深森未青】 

1票(そう蛸)

そう蛸さんのコメント
「作者が面白がってはいけない、とはこうゆうことかと思いました。
洗い髪で墓地前いて、しかもタクシーに乗る事情をおもうとこわいです。」

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3人から票が入りました
作山さちさんの作品です。
ブラウスの歌は印象的でした。

土砂降りの雨が透かした制服のブラウスの奥にふるさとがある 
【作山さち】

2票(地球人、イマイ)


地図にない小さな橋を渡るとき欄干に置く私の時間
【作山さち】 

1票(高松紗都子)


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3人から票が入りました
高橋徹平(空山くも太郎)さんです。
改名してからまだ間もないのに、2票入ったのは凄いと思います。


とび色のひとみはしずかアンテイークドールの瞳は泣こうとしている
【空山くもたろう】  

1票(台所のキフジン)


曲がり角ひとつ間違えたぐらいで自由になってしまうね、東京。  
【高橋徹平】

1票(蜂谷希一)

蜂谷さんのコメント
「上京してはじめて分かった作品。
実際に新宿などを歩いて角を曲がった瞬間に人通りの少ない場所に出たりすると、
はっとしてしまいます。今の僕に語りかけるような作品です。」


病室の天井は白い 神様は白い光かと訊くガン患者
【高橋徹平】

1票(小林ちい)

小林ちいさんのコメント
「初めて読んだときにぞくっというか何とも言えない感じがしました。
死や希望やいろんなことを考えさせられる力があると思います。」


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2人から票が入りました
結社「未来」で活躍中の西巻真(cocoa)さんの作品です。
最近の西巻くんは思想詩のような作風で注目を集めています。


死ぬことはきもちいいこと 切られても蛸は体をひくひくさせる 
【cocoa】

1票(地球人)


上目遣いでこぼれる泡を舐めている きみはとかげのようにさみしい
【西巻真】 

1票(はせがわゆづ)


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2人から票が入りました
ケータイ短歌でもおなじみ、
伊藤夏人さんの作品です。


わがままは言いませんからその前にフランス育ちの水を飲ませて
【伊藤夏人】

1票(おはぎ)


砂浜で助けなければゆっくりと歩めましたかもしもし亀よ
【伊藤夏人】

1票(虫武一俊)

虫武さんのコメントです。
「いまもって完全に意味が取れているかどうかあやしいのですが、
その不思議な世界観も含めてなにか惹かれてしまう歌です。あと意外と口に出してみて楽しい。」

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2人から票が入りました
昨年、見事「短歌研究新人賞」を受賞された
やすたけまり(おとくにすぎな)さんの作品です。

ならんでる黒いものより怖かった「かもじや」という看板の文字
【やすたけまり】

1票(魚虎)


「春用の切手いちまい。」窓口で言えたらこんな手紙も出せる 
【おとくにすぎな】 

1票(小林ちい)

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2人から票が入りました
新井蜜さんの作品です。
新井さんもまたぜひ復帰してほしい投稿者の一人です。


見つめればほんのり染まる耳たぶの膨らみかけた花蕾色
【新井蜜】 

1票(はせがわゆづ)


県道に初めてついた信号の渡り初めする我が老人会
【新井蜜】

1票(高橋徹平)

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2人から票が入りました
なぜか短歌研究賞のパーティー会場でお会いした
中村成志さんです。


海岸の小石をクチに入れるなら黒く平たくなめらかがいい
【中村成志】 

1票(台所のキフジン)


通過する特急の窓うめつくす[祝][合][併][南][セ]「ン」[ト][レ][ア][市]
【中村成志】 

1票(横田ダイヤ)

横田さんのコメント
「タイポグラフィのように見せる短歌で気になりました。
しかし、よく考えると[ ]で囲まれた内容は、
昔なら和歌で詠んだような土地を褒める祝うといった呪術的なもの。
あまり見たことのない形式の中に古代の思想が入り込んでいるといった複雑な歌でしょうか。
場所は特急の止まらない駅のようです。」

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2人から票が入りました
おなじみ岡本雅哉さんの作品です。
おもしろ短歌の腕もなかなかのもので、打率も高い作者です。


赤外線センサーで点く明かり避け花子は潜む用具置き場に
【岡本雅哉】 

1票(帯一 鐘信)


憧れのお姉さん飲むマンハッタン あげくチェリーを含むくちびる
【岡本雅哉】 

1票(横田ダイヤ)

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2人から票が入りました
燻し銀の存在感を放つ瀧口康嗣さんの作品です。


光差すトースト冷えて石板のその一面に野イチゴ史あれ  
【瀧口康嗣】 

1票(蜂谷希一)

蜂谷さんのコメント
「トースト→石版の発想、ジャムが語る野イチゴ史。
朝の食卓の光景から遠くに飛び出すような感覚。
実は先ほど見つけたばかりの作品なのですが、一目ぼれしました。」


たわむれに翡翠を語り尽くしたるパパこそ永遠(とわ)に夏のクオリア 
【瀧口康嗣】 

1票(鶴太屋)

鶴太屋さんのコメント
「言葉が緊密に連結していて完璧ですね。
欲を言えば「クオリア」が茂木健一郎の顔を連想させてしまうのが、ちょっと残念です(笑)。
「野イチゴ史」もよいのですが、まだ再考の余地があるような気がします。
ほかの瀧口さんの作品もっと読んでみたいです。」

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2人から票が入りました
みうらしんじさんの作品です。
宮崎を代表する投稿者です。
宮崎ではマンゴープリンご馳走様でした。
打率も高い作者です。


空の青海のあおにも染まらずにカルピスサワーの缶がただよう
【みうらしんじ】 

1票(高橋徹平)

高橋さんのコメント
「「本歌取りの投稿歌の中、本作品が気になりました。隣県民としてリアルに日向灘を想像してしまいました。染まらず漂う人工物による

環境汚染、酒の缶である事から大人の仕業であることが推測され、痛烈な批判にもなっていると思いました。」


芽の出ないわたしがここにいるごとく髪ののびない人形ならぶ  
【みうらしんじ】

1票(異能兄弟)

異能さんのコメント
「「髪ののびない人形」というごくごく正常、普通なところに着目したのがすばらしいです。
そもそも人形の髪の毛が伸びるほうが怪奇譚になるくらい異常なこと。
この歌には、自虐的でありながらどこかしら救いがあるように感じられるのもそのせいでしょう。」


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2人から票が入りました
高打率を誇る
たみさんの作品です。
どちらも魚の歌です。


見えぬ線ベーリング海に越えながら魚(うお)は小さく時遡る
【たみ】 

1票(瑞紀)


「この金魚全部死んだら猫飼うの」水に溶けゆく言の葉の毒  
【たみ】 

1票(蜂谷希一)

蜂谷さんのコメント
「きっと前半のせりふは何気なく発せられたものなのでしょう。
冗談めいたせりふからにじみ出た毒が金魚鉢に吸い込まれる映像を想像してゾクゾクした作品です。」

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ここからは
1票入った作品です。


名古屋在住の嶋田電気さんです。
また復帰してほしいです。

同じ星を見ているロケットペンシルで書いた手紙はとどきましたか
【嶋田電気】 

1票(猫丘ひこ乃)

猫丘さんのコメントです。
「「同じ星」と「ロケット」が響き合っていて「とどきましたか」
とたずねるところにそのロケットから感じられるスピード感、
届けたい気持ちが伝わるようで、手紙が無事に届くことを祈りたくなりました。
嶋田電気さんの歌には心温まるものが多く感じられました。」


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ツボを押さえた短歌をつくる
虫武一俊さんです。

靴下のなかの小石にさえおれはさらせさらせと諭されている
【虫武一俊】 

1票(沼尻つた子)

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角川短歌賞受賞者で、
現在は短歌界でも活躍中の
ヤマダワタル(山田航)さんの作品です。

ここにいる全員の首がすぽぽぽぽんと飛ぶ空想する春の朝礼 
【ヤマダワタル】  

1票(沼尻つた子)

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名前の漢字を何度も誤植して失礼しました
都季さんの作品です。


おっとっとのヒトデは全部あげるから星が微睡むまでそばにいて
【都季】 

1票(帯一 鐘信)

「おっとっと」のヒトデに注目したところが鋭いです。

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テクニシャンの
秋野道子さんの作品です。

あまた来し羽黒とんぼの一匹となる暑さかな呼返町(よびかえしちょう)
【秋野道子】  

1票(田中落下傘)

呼返町という地名がやけに効いています。


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中野玉子さんの作品です。
玉子さんは、イラストレーターの山下以登さんのペンネームです。
グラフィックデザイン界の大御所であったお父様(故・山下勇三さん)とは知り合いでした。
だいぶ後になって、玉子さんが山下さんの娘だと知ってびっくりしたのであります。


ジジジジと女がラジオでしゃべってたクジラ解体現場めざして
【中野玉子】  

1票(田中落下傘)

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怪しい歌をつくるのが得意な
かわらさんの作品です。
月光仮面の歌は、かわらさんの代表作です。

真夜中の鎮守の森の深奥(しんおう)で月光仮面に縛られている
【かわら】  

1票(田中落下傘)

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ケータイ短歌でも活躍中の
小林ちいさんの作品です。
NHKホールでお会いしました。

わたを入れ髪を縫いとめ目を入れてあなたの首の 後ろを閉じる
【小林ちい】  

1票(台所のキフジン)

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ペンネーム同様、気になる歌をつくる
はづき生さんの作品です。

水色で満ちた子供の絵日記は空と海との境目がない
【はづき生】  

1票(おはぎ)

おはぎさんのコメント
「孫の絵日記見ていると全体を青色で塗りつぶした絵がたくさんあり実感しました。」

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ペンネームなのか本名なのか謎めいています
たちはらそうさんの作品です。

お祭りで救ってやった赤い子が水の中からバカバカという
【たちはらそう】  

1票(おはぎ)

「金魚掬い」と「救い」をかけている歌です。

おはぎさんのコメント
「金魚すくいでゲットした金魚は家で飼うとすぐに無くなってしまうので、
金魚からすれば必死に云っているようで、バカバカが凄く自分に応えてきます。」

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J−WAVE時代の主要投稿者・
稲荷辺長太さんの作品です。
人柄の良さで、朝日カルチャーセンターの受講者の間でも人気者でした。
また気が向いたら投稿してほしいです。

童貞はギターの音色で飛翔する儚い永久機関なんだぜ
【稲荷辺長太】

1票(酒井景二朗)

酒井さんのコメント
「いかにも「サンボマスター」が歌ひさうな感じだつたので。」

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やはり初期の主要投稿者・
天国ななおさんの作品です。
朝カルでは、頼れるお父さん的なキャラクターでみなさんから慕われていました。

戯言を叫ぶマイクで殴りつけ場内に響くズコボコドカボコ
【天国ななお】

1票(酒井景二朗)

酒井さんのコメント
「亂暴な歌ひぶりが、かへつてお題にベストマッチ。」

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現在は「短歌人」という結社で活躍中の
砺波湊さんの作品です。
僕は砺波さんの歌では、少年使節の歌が凄く好きです。
ますますのご活躍を期待してます。


頬杖の君が降らせるグラニュー糖 春の雪として紅茶と混じる
【砺波湊】

1票(瑞紀)

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センスのいい歌を連発してくれました
カー・イーブンさんの作品です。

何度でも釣られてくれるぬばたまのブラックバスが棲む2ちゃんねる
【カー・イーブン】

1票(あきえもん)

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現在は「短歌人」という結社でも注目を集めている
イマイ(黒崎聡美)さんの作品です。
病院を題材にした歌に印象的なものが多いです。
NHK全国短歌大会に入賞した時にお会いしました。

病院のななめむかいの果物屋ふかい昼間のかなしい匂い
【イマイ】 

1票(高橋徹平)

高橋さんのコメント
「「ふかい昼間」「かなしい匂い」といった体性感覚に近い言葉選びに惹かれました。
平仮名の多用も効果的で湿り気が感じられて個人的に好きな一首です。」

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大衆性のある歌をつくれる
ももやままこさんの作品です。

マタニティーブルーという名のカクテルがあるなら今日はそんなため息
【ももやままこ】 

1票(てこな)

てこなさんのコメント
「上の句の発想、リズムがすきです。妊娠中はお酒が飲めないけれど、きっと、マタニティブルーを吹き飛ばすような
きれいな色のカクテルなんでしょうね。」

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NHK全国短歌大会の会場でお会いしました
西野明日香さんの作品です。

ぼくたちはどうせちぎれてしまうからエッフェル搭の風はいらない  
【西野明日香】 

1票(伊藤夏人)

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結社「未来」に入会して活躍が期待される
きたぱらあさみ(キタパラアサメ)さんの作品です。

永遠にラスボスだけは倒さない もう少しだけ勇者でいたい 
【キタパラアサメ】 

1票(伊藤夏人)

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自分の世界を持っている
穂ノ木芽央さんの作品です。

いつまでも探しつづけていたいのに きみのこころを泳ぐネッシー 
【穂ノ木芽央】 

1票(伊藤夏人)

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ひいらぎさんの作品です。

変わりゆく暮らしの中でローソンのからあげくんはいつも優しい 
【ひいらぎ】 

1票(伊藤夏人)

現代的、平成時代的な歌です。

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入選率の高い水野加奈さんの作品です。
僕は、水野さんの歌では、ツチノコの歌がとても好きです。


好きだったフィギュアも入れてあげましょう宇宙の海へおくる棺に
【水野加奈】 

1票(横田ダイヤ)

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ユーリーボさんの作品です。

カンタくん結構UMAだと思うけど誰も触れない誰も言わない
【ユーリーボ】 

1票(横田ダイヤ)

横田さんのコメント
「この短歌へのコメントがカンタくんの06の画像だけだったのがまた良かったです。
言葉を使わない相聞歌。いい空間を作り出していました。」




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めぐみさんの作品です。

闘わないことを非難されている気がして仰ぐ安田講堂
【めぐみ】 

1票(ユメバク)

いい歌です。

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柚木 良さんの作品です。

フルーチェを二人でわけるスプーンのひかりがすこし夢に似ていた
【柚木 良】 

1票(文月郁葉)

フルーチェのCMには夢がありましたね。

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魚虎さんではなく、
魚男さんの作品です。

通勤路 41歳の春になり タリラリラーンと駆けだしてみる 
【魚男】 

1票(文月郁葉)

文月郁葉さんのコメント
「このお歌は総評が出る前からお気に入りでした。
自分も思わずタリラリラーンと駆け出したくなる明るさが、理屈抜きで好きです。」

どこか癒される歌ですね。

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末松さくやさんの作品です。

水の字を名前にもった人だからめぐりあう日がまたあるだろう
【末松さくや】 

1票(やすたけまり)

上の句にオリジナリティがあります。

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以上です!!

なんかもう凄い達成感があります……。
もういつBlogが終了しても悔いが残らないというくらいの達成感です。
やっぱりこれは4年に1度やればいいお祭りだと思います。

そう言わずに毎年やってくださいよ!

考えときます……。

でも、みなさんのおかげで、
何度も読み返したくなる記事になったと思います!

最後に、この「笹短歌ドットコム」の場を与えてくださった(Blogタイトルの名付け親でもあります)、
元(株)ROBOT → (株)プラスヘッズで、「GOLDEN EGGS」をプロデュース → (株)ソニーデジタルエンタテインメント 
→ 現・某アイドルグループプロデューサーの原田経史さん、
(株)パイロット社長の井ノ部研太さん、
大竹恵理子さんはじめキャラブロのスタッフのみなさん、
八木橋正司さん、
に、あらためて御礼申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。

ということで、これでようやく「UFO・宇宙人」短歌の総評に
とりかかることができます。

お疲れでしょうが、
がんばってください!

がんばります(涙)!

では、5周年に向けてがんばっていきましょう!
今後ともよろしく哀愁☆
posted by www.sasatanka.com at 00:28| Comment(15) | TrackBack(0) | 特別企画・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月08日

笹短歌ドットコム4周年記念特別企画


本日、5月8日で、
「笹短歌ドットコム」開設4周年となります!

おめでとうございます!!

ありがとう!

投稿者のみなさん、スタッフのみなさんのおかげで
ここまでくることができました。
本気でやめたいと思った時も何度かありましたが、
投稿者のみなさんとの友情と使命感で乗り越えてきました。

えらい!

本当は楽しいから続けてるんだけどね。
丸2日かけて選歌した歌をBlogに上げてうっとり眺める時間が
快感になっています。
なので、5周年までは続けたいと思います。

あと1年……?!
もうちょっとがんばりましょうよ!

いまのは冗談。
もうちょっと、がんばるつもりです。

ということで、
4周年記念特別企画を行いたいと思います!!

待ってました!!


「笹短歌ドットコム」開設以来
4年間の間に投稿された作品(予選通過作品)の中で、
特に好きな歌4首作者名付きでコメント欄に投稿してください。
投稿者以外の純粋な読者の方もぜひご参加ください!!

4周年だけに4首ってわけですね。

イエス!

4首の中に同じ作者が混じらないようにしてください。
たとえば、4首中2首が、故・笹井宏之くんの歌とかいうのは
NGです。
あと、自作は選ばないでください。

できれば、なぜこの歌が好きなのかを書いてください。
書かなくても全然かまいません。

選歌のセンスでその人の作風が、ある程度予想できるものです。
みなさんたいてい自分と似た作風の作品を選ぶ傾向があります。

そういった意味でも非常に興味深い試みです。

おもしろそうですね!

締め切りは、
5月18日(火曜日)いっぱいまでとさせて頂きます。

膨大な量の中から、たった4首を選ぶのは大変な作業だと思いますが、
ここ
を利用してがんばってください。

みなさんの選ぶベスト4首を楽しみにしてます!!!


お知らせです。

「名古屋短歌大会」の選者を務めさせて頂きます。
詳細です↓

_________________________


NHK学園主催 

開府400年記念 名古屋短歌大会


<選者>
岡井 隆  荻原裕幸  小塩卓哉
斎藤すみ子  笹 公人  古屋智子

<講演>
岡井 隆 「今の短歌これからの短歌」

【大会概要】
・投稿締切 6月1日(火)消印有効
              
・開催日時 短歌 平成22年8月6日(金)

          午後1時〜午後4時

・会場 名古屋能楽堂(名古屋市中区)



【投稿について】
・ 規定の用紙(コピー可)をご利用ください。
・ 一人何組でも応募できます。
・ 自由題のみ、あるいは自由題と題詠1作品で応募してください

【投稿料】
自由題 1首   一組につき1600円
  
あるいは、上記に
  題詠  「古」1首を加えて、 一組につき2400円
  

                           となります。
一組の投稿料には、一冊の入選作品集代を含みます。

題詠作品のみの投稿は、受け付けしておりません。

☆送金方法
   郵便振替・現金書留または郵便小為替のいずれかをご利用ください。
   (自由題のみ1組でも、自由題のみ1組+題詠つき1組でも結構です)
   
   ○郵便振替の場合は、払込後の証明書を、投稿用紙に添付してください。
   ○現金書留・郵便小為替の場合は、投稿用紙と同封してください。


投稿用紙請求先
〒186−8001
東京都国立市富士見台2−36−2
NHK学園名古屋短歌大会係
電話042−572−3151

_______________________


あきえもんさんはじめ名古屋在住の人も、
それ以外の人も、ぜひ気軽にご投稿ください!
投稿希望の方はNHK学園に応募用紙をご請求ください。


5月12日(水)18時〜

現代歌人協会の公開講座

第2回 5月12日(水) アナログ世代 vs デジタル世代
    パネリスト:小高 賢 、道浦母都子 vs 笹 公人、石川美南
    司会:穂村 弘

こっちもよろしく!

なんとか、8日中にUPできてよかったです。

では、よろしく哀愁☆
posted by www.sasatanka.com at 23:07| Comment(47) | TrackBack(0) | 特別企画・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月18日

二人の師匠への受賞(章)祝い

sasa-7.gifおひさしぶりです!
生きてますよ。

sasa-5.gifなかなか「総評」にとりかかれず、申し訳ありません。
ちょっと時間のかかる仕事に取り組んでいました。
そのうちの一つが、革命家であり、小説家であり、歌人の
小嵐九八郎さんの第三歌集の「解説」の仕事。
学生運動とかに興味がなかったので、そのへんのことを調べるのにも苦労しました。
小嵐さんはお世話になっている兄弟子(岡井隆門下)なので、がんばりました。
歌集が出ましたら、またお知らせいたします。

sasa-7.gifそんな執筆生活のなか、二つの受賞パーティーに出席しました。

一つ目は、師匠である岡井隆先生の高見順賞の授賞式。

岡井先生は、歌人として極めつつ、
詩集『注解する者 』(思潮社)
でも最高峰の賞である高見順賞を受賞されました。

var_20100318030628.jpg
快挙です!!
同時受賞は、岸田将幸さん。
史上最高齢と最年少の同時受賞となりました。


var_20100318135442.jpg
これは別の会の時の写真だけど、僕、岡井先生、小嵐さん。
いつも白い服を着ていらっしゃる小嵐先生のことは、
前科のある妖精と呼ばせて頂いております。

「歌人はアーティストではなくアルチザン(職人)を目指すべき」
と常々おっしゃっている岡井先生ですが、
今回の受賞で、岡井先生はその両方の資質を兼ね備えた
類稀な才能の持ち主であるということが証明されたと思っています。
岡井先生、本当におめでとうございます!!


もう一つは、
敬愛する大林宣彦監督の旭日小綬章受章記念祝賀会
「大林さん、次の映画は まあだ会」

sasa-7.gifこちらはレポ風にいきます。

var_20100318025249.JPG
会場に入るなり、高橋幸宏さんに遭遇!
つい先日、細野さんの会でお会いしたばかりですが、 緊張しました。
YMOという存在は、自分を思春期に戻してくれます。

幸宏さんは大林映画「四月の魚」で主演、
「天国にいちばん近い島」
では原田知世さんのお父さん役で出演されいます。
いま幸宏さんと知世さんが一緒にバンド(pupa)を組まれていますが、大林映画ファンにとっては感慨深いものがあります。

会場に監督の商業映画デビュー作である「HOUSE」 のサントラ(by・ゴダイゴ)が流れ、パーティーがスタート。

大林映画歴代作品のダイジェストが流れ、
開始早々目頭が熱くなったのでした。

var_20100318025332.JPG
司会は、南原清隆(ナンチャン)さんと勝野雅奈恵さん
var_20100318025434.JPG
秋吉久美子さん、三浦友和さん、長門裕之さんなどのスピーチのあと、大林映画歴代出演女優のみなさんが舞台上に勢ぞろい。
壮観でした。

var_20100318025508.JPG 美しき女優のみなさんに囲まれてスピーチする監督。

var_20100318025530.JPG
発起人のみなさまがご登壇。
日本を代表する各界の重鎮たちが大集結といった印象でした。

錚々たる大先生方に混じって、
なんと小生もスピーチをさせて頂くという展開になり、 本当にドッキリかと疑いました。
その時点で食べ物が口に入らなくなったことは言うまでもありません。
大林監督は、自分のようなわけのわからない自称歌人を買い被ってくださっていて、うれしいやら申し訳ないやら……。

スピーチは、
「その日のまえに」でヒロインの永作博美さんの兄役をやらせて頂いた時
演技について、
「ねらわれた学園」の手塚眞さん以来の謎の怪演と言われているとか、
「時をかける少女」の高柳良一さんを見習ってわざとセリフを棒読みにした(むろんジョーク)
とか話そうかと思ったのだが、
目の前にご本人たちがいたので勇気が出ず、断念。
無難に祝辞を述べさせて頂きました。
緊張のあまり噛んでしまいましたが……。


var_20100318025554.JPG
「その日のまえに」で、
夫婦役をやらせて頂いた柴山智加さん
当時(2年前)とまったく変わってないです。(変わっちゃ困るって)

var_20100318025629.JPG 監督による貴重なピアノ演奏。
余技の範疇を越えた素晴らしい腕前でした。
大林監督のご人徳を感じる、
祝意に満ちた素晴らしい祝賀会でした。
監督、本当におめでとうございます!!

posted by www.sasatanka.com at 13:55| Comment(11) | TrackBack(0) | 特別企画・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月30日

「NHK全国短歌大会」レポート

今年も「NHK全国短歌大会」ジュニアの部の選者を務めさせていただきました。

お疲れ様でした!
おもしろい歌はありましたか?

あったよ。
たとえばこんなの。

・ぼくゴリラ ウホホイウッホ ウホホホホ…… 

コラッ!
それ最近いろんな意味で話題になった歌だろ!
せっかくほとぼりが冷めかかってるのに、なにも蒸し返さなくても……。

あの歌を選んだ選者の田井安曇さんは結社「未来」の大先輩なんだけどね……。
なかなかバラエティに豊んだ人材を輩出してますね、「未来」って。

ということで、僕が選んだジュニアの歌をご紹介します!


☆大会大賞・小学生☆

・ぼくだって暴れ出したい時がある よーくわかるよ栗のイガイガ
(香川県 綾川町立滝宮小学校6年 古川陽介くん)



☆選者賞・小学生☆

・メトロノームチクタクチクタク音が鳴る銀が鉄道の列車が来そう
(福岡県 福岡市立草ヶ江小学校 3年 中垣くん)


☆大会大賞・中学生☆

・恋するとまわりの人が岩になる岩の間に花が一輪
(東京都 武蔵野市立第一中学校 2年 渡邊是能)


☆選者賞・中学生☆

・勉強をやらないことをミンミンと必死に生きるセミのせいにする
(静岡県 静岡市立東豊田中学校 2年 石川あたる)


今年も良い歌がたくさんありましたね!

同じくジュニアの部の選者・斉藤斎藤さん、古谷智子さんが選んだ歌もおもしろかったので、興味のある方は入選作品集を取り寄せたり、テレビ放送をご覧ください!

var_20090130093811.jpg お歴々が勢ぞろいした楽屋。

緊迫したムードが漂っていました。
小生は緊張のあまり、隅っこで小さくなっておりました。

ほんとかよ……。

今回、僕の教え子や「笹短歌ドットコム」の投稿者が3人「秀作」に選ばれました!
お祝いとして、こっそり楽屋にご案内&記念撮影してあげました。
ADか!俺は。

まずは、内田裕士さん。

「秀作」 栗木京子・選

・ハンカチでくるんだはずの紋白蝶壊れた羽根で部屋をでていく
(内田裕士)

内田さんは有名なメイクアップアーティスト。
毎月1回、朝8時から渋谷で行われている経営者を対象とした僕の短歌教室で、世話人もしてくれてます。
毎回徹夜のフラフラ状態で講義をした甲斐がありました。
おめでとうございます!
お次は、イマイさん。

「秀作」 川野里子・選  栗木京子・選  穂村弘・選 

・白い壁白い光にかこまれて打ち込んでいく他人の病名
(イマイ)

トリプル秀作お見事でした!

最後に、ウクレレさん。

「秀作」 伊藤一彦・選

・平等に愛を切り分け与えてる母はこころに÷の字を持つ
(ウクレレ)


ほか、「入選」した教え子もたくさんいました。
みなさん、本当におめでとうございます!!
来年は「特選」を目指しましょう!

特選歌で特に好みだった二首をご紹介。

☆大会大賞☆
「特選」 沖ななも・選 俵万智・選 
「秀作」 小島ゆかり・選 三枝昂之・選 佐伯裕子・選 
     佐佐木幸綱・選 玉井清弘・選 穂村弘・選


・ガイコツと抱き合わないとスイッチに手が届かない理科室倉庫
(宮城 相澤由紀子さん)


「特選」 佐伯裕子・選

・王女をり宇宙人をり武者もをり劇を終へたる子らの校庭
(東京 板坂さん)

ほかの大賞作品などはこちらからご覧ください。


var_20090130093755.jpg 辺見じゅんさん(角川春樹さんのお姉様でもある)と俵万智さんに囲まれて。

この日の前々日に角川春樹さんに飲みに連れて行って頂いたこともあり(不思議)、辺見さんとも話が盛り上がりました。角川家は、「リアル念力家族」だと思っております。

春樹さんから贈って頂いた句


 笹公人氏

念力の大音響や猟期来る
  角川春樹


よろしく哀愁☆
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2008年12月22日

AKB48小林香菜さん&表彰式

おはようございます。笹師範です。

本日、12月22日(月)発売の
『アップトゥボーイ』(ワニブックス)
にて、AKB48のメンバー・小林香菜さんの連載「よのなか入門」(穂村さんぽいタイトル)で、 短歌の先生として香菜さんに半日がかりで短歌を教えた時の怒涛のドキュメント記事が載っています。
ぜひご覧ください target='_blank'>小林香菜さん(17歳) は、超天然のおバカキャラで有名なアイドルらしく、
地球の絵を描かせると、地球儀の絵を描き
(棒が地球を支えていると本気で思っているらしい)

古代人か!

日本地図を描かせると、いびつな謎の物体を描き(しかも北海道の上に沖縄があったり)、
ニワトリが卵から生まれるということを知らなかったり、 九九が言えなかったり…… と、里田まいをはるかに越えた、
放送禁止レベルゆえにテレビに出せないという噂もあるおバカ界の最終兵器とのこと。

で、実際会ってみてどうでしたか?

予想以上だったね……。
ゆとり教育が生んだモンスターですよ、あの子は。

モンスターって!

正直、講師人生最大のピンチを迎えました。

そんな香菜さんにどうやって短歌を教えたんですか?

var_20081222085017.jpgまずは中学生がつくった短歌作品で歌の説明をしようとするんだけど、細かく単語のレベルから説明しなきゃいけない。サリバン先生か!俺はって感じだってね。

そこまで言う!

編集部一同、本当に短歌を書けるのか?と固唾を呑んで見守っていましたが、むしろ、そういう子のほうがおもしろい発見の歌をつくったりすることもあるので、無知蒙昧・無明を逆手にとった素材を生かした歌づくりを指導しました。

で、結果は?

大成功じゃないかな。
短歌としてはNGに違いないけど、おもしろい31文字にはなったと思います。
漢字は間違いだらけだし(「舌」を「乱」と書いたり。世界のクロサワか!)、
字数がやたらに多い仏石足歌みたいのもあったけど、
発想自体には光るものがありましたね。
いろんなエピソードを引き出して、添削して、
中野の「まんだらけ」で吟行もして、 10首もの歌ができました。

どんな歌か気になります。

では、特別に1首だけご紹介します。
var_20081222085242.jpg・プロデューサーの秋元康さんを一般ファンと間違えて楽屋に入るなと注意したという歌(実話)

これです。
var_20081222085242.jpg


おもしろい!
イラストも謎……!

他は、

・タクシーで本当にアイドルかとしつこく疑われたという歌(実話)

・ペコちゃんに眉毛がないという発見の歌

などなど、おもしろい歌ができたと思う。

ワニブックスのモバイルコンテンツ
を含めれば、10首全部を読むことができますので、
ぜひご覧ください!

香菜さんはちょっとお調子者だけど、 憎めない良い子です。
ぜひブレイクしてほしいなぁ。
みなさんも応援してあげてください!
AKB48のコンサートもショウとしての完成度が高くて素晴らしいですよ。
最初、おニャン子クラブみたいのをイメージしていたのでびっくり。
秋元さんの本気を感じました。
アイドル好きならずとも楽しめると思います。


昨日、12月21日(日)

「みんなでSTOP STD!短歌コンテスト」の表彰式・懇親会
が無事執り行われました。
投稿してくださったみなさん、ご協力いただいたみなさん、
ありがとうございました。

3,100首の応募作品の中から、審査員4名(やくみつる氏、海原純子氏、笹公人、梅内美華子氏)により、入賞作品として100首が選出され、さらに、この中から、審査員特別賞4首、STOP STD!特別賞1首、団体賞として5校が選出されました。

var_20081222085100.jpg

表彰するやくさん。

僕が1位に選んだ「笹公人賞」の歌はこの歌。

・あの時に行けばよかった第二理科室行ったら何か変わっていたのに 
(西本 馨)

<選評>
ゴルフにも恋愛にも「たら、れば」は禁物ですが、
ついつい過去にした選択を悔やんでクヨクヨしてしまいがちですよね。
しかも告白される場所が第二理科室ときたら、よけいにそうです。
理科の化学実験のように何かが変わっていたかもしれません。
どこか「時をかける少女」のようなジュブナイルSFのムードも漂わせている歌です。

ということで、
馨という名前もいい感じだったので、往年の原田知世さんのような美少女をイメージして歌を読み、
表彰式ではどんな子があらわれるのかとちょっとドキドキしていたのですが、あらわれたのは、こんなユーモラスな雰囲気を漂わせた少年(高校1年生)でした……!
var_20081222085140.jpg


ユーモラスって……。
馨さんといっても男だったんですね。
師範ドンマイ☆

西本くんおめでとう!
これからもぜひ短歌をつくり続けていってください。

var_20081222085151.jpg

審査員のやくみつるさん、僕、梅内美華子さん。

var_20081222085202.jpg

集合写真

ちなみに団体賞は、こちらの学校が選ばれました。

小牛田農林高校(宮城)、西武文理大学(埼玉)、久喜北陽高校 (埼玉)、金城学院高校(名古屋)、下関商業高校(山口)

入選者100名には1万円分の図書カードが貰えますし、
受賞者が参加できるパーティーのお土産(ほとんど引き出物)もとても豪華なので、
学生のみなさん、来年はぜひご応募ください!!

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2008年11月08日

「列島縦断短歌スペシャル」宮崎レポ

sasa-7.gifかなり話題が古くなってしまいましたが、
Blogの故障が直ったので、
宮崎のレポをUPします!

10月11日

NHK−BS「列島縦断短歌スペシャル」のため宮崎へ。
東京は17度だったが、宮崎は27度。
厚着をしていったので、宮崎空港に着いた途端に汗ばんだ。
街路樹のフェニックスに南国を感じていやが上にもテンションが上がる。 日向のホテルに着いたあと、出演者のみなさんとバスで坪谷にある
「若山牧水記念文学館」に行き、リハーサル。
天井と像の間が数ミリでギリギリに収まっている若山牧水像があり、衝撃を受ける。

var_20081108171258.jpg このギリギリ感を見よ!

生放送でも、思わず、荒井注のカラオケボックス事件(カラオケボックスをつくったのに、設計ミスで肝心の機材が入らなかったという事件)を引き合いに出して、この「ギリギリ牧水像」を紹介してしまった。
荒井注カラオケボックス事件、果たして何人くらいの視聴者がわかっただろうか?

打ち上げのにとき、文学館のスタッフにこの像がなぜ天井ギリギリに置かれているのかを聞いてみたところ、 処分する予定のものを引き取って試しに館内に入れてみたら、
奇跡的にギリギリ入ったのだという。
牧水の意思を感じるエピソードだ。

牧水の生家の裏の山を登っていたるとき、
メタリックブルーのホースのようなものを発見。
しかし、よく見ると動いている。
蛇かと思ったが、違う。
UMA(未知生物)かと思い、興奮しながらシャッターを切る。

var_20081108181012.jpg
伊藤さんによると、この謎の生物は「かんたろう」という名の大ミミズだそうだ。
「かんたろう」といえば、
「寺内貫太郎」と、みんなのうたの「北風小僧の寒太郎」くらいしか知らなかったのだが、こんなに不気味でパンチの効いた「かんたろう」もいたとは……。
さすがは神秘の国「日本」である。
しかし、こんなのが部屋に入ってきたら嫌だなぁ。
生理的に受け付けない色をしている。

var_20081108171344.jpg 山道からの景色。絶景かな。

10月12日

坪谷の「若山牧水記念文学館」に行き、生放送。
空は晴れ渡り、最高のロケ日和。
坪谷は、どこを見ても景色が美しかった。

生放送の歌会で披露した歌。

お題「歩く」

・歩かねば埴輪にするぞと声のして振り向けば大き古墳聳ゆる 
(笹公人)

※作者がバレないようにわざと旧カナでつくっています。

伊藤一彦先生と永田紅さんが、
それぞれ2点(2点満点中)を入れてくださいました。

伊藤先生の絶妙な人選が功を奏して、楽しい歌会になりました。

メインの投稿コーナーでは、
わがblogでもおなじみの
瑞紀(白石瑞紀)さんが、
栗木さんの「特選」、穂村さんの「十首選」に選ばれたそうです!
おめでとうございます!

栗木京子・選「特選」
・激情はふいに漲るものならむ<のぞみ>に乗りて渡る朝川 
(白石瑞紀)

穂村弘・選「十首選」
・秋冷の漲りくれば一心にぎんなん拾う人の増えゆく
(白石瑞紀)


やすたけまりさんが、
穂村さんの10首選に選ばれたそうです!
おめでとうございます!

穂村弘・選「十首選」
・あざやかによこぎる鳥を待つ空にすきとおるものばかりみなぎる
(やすたけまり)

六十選(10首×選者6人)はこちらでぜんぶ読めます。
http://www.nhk.or.jp/tankahaiku/special/pdf/tanka0810.pdf

うちのblogで活躍できれば、
どこにいっても活躍できますよ。
そのへん自信を持って良いと思います。

うちのblogでおなじみの地元民のみうらしんじさんがマンゴープリンを持ってきて、
遊びにきてくれました。
マンゴープリン美味しかったです!

var_20081108171358.jpg 歌会を終えたあとの記念撮影。
左上から、奥田亡羊さん、僕、米川千嘉子さん、
左から、永田紅さん、伊藤一彦先生、上村典子さん。


あんまり観光はできなかったけど、
宮崎最高でした!!

今度はぜひ観光で行ってみたいです!

よろしく哀愁☆
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2008年09月10日

喜多方だより

どうも笹師範です。
先日、文化庁の企画で、
福島県喜多方市にある喜多方第一中学校の2年生のクラスで短歌のモデル授業をやらせて頂きました。

師範の作品は中2の国語の教材にも使われてますからぴったりの役割かもしれませんね。

DA.YO.NE!
みんな見てるー?
イェー!イェー! うんこ!うんこ!

そういう小学生みたいなリアクションやめてください!
中学生にバカにされますよ……。

ラジャー!
えー、喜多方は7年ぶりでした。
前回は三春の玄侑宗久さんちに遊びに行くついでに寄ったのですが、思い出のある土地です。

var_20080910061433.jpg ひんやりとした風が心地よかったです。

喜多方駅に着くと、喜多方市熊倉公民館の館長さんのご案内で、
郷土料理をご馳走になりました。
var_20080910061445.jpg var_20080910061452.jpg 手打ちそばも鰊も茄子も絶品!
喜多方はラーメンだけではなく蕎麦も美味しいのですね。
喜多方に行かれた際はぜひこのお店に行ってみてください!

打ち合わせのあと、いよいよ中学校へ。
まるで教育実習に来た学生の気分。
var_20080910061504.jpg 喜多方第一中学校

東京のキッズたちと違って、素朴で素直な子が多いと感じました。
どの生徒さんも僕らを見るなり明るく「こんにちは!」と挨拶してくれて、 しかもそれがとても自然な感じで素晴らしかったです。
日本も捨てたもんじゃないと思いましたね。

そして、いよいよ授業の時間。
教室のうしろに教育委員の方やら国語の先生やら大人がたくさんいたためか、生徒さんたち、いつもと違う環境に緊張していて固くなっている様子でした。
しかも笹公人を知っている生徒さんが一人もいないというかなしい状況(俺ってマイナー…)も手伝い、夏休み気分の抜けない教室に、このおっさん誰?的なムードが漂ってました。
しかしアウェイな状況には慣れている師範、白虎隊精神でがんばりましたよ。

授業の反応はどうでしたか?

とりあえず短歌は伝統にがんじがらめの堅苦しいものという先入観は破壊できたと思います。

なるほど。

講座のあと、プログラム通り、生意気にも先生方、教育委員のみなさんに短歌の授業をやる上でのアドバイス、質疑応答などをさせて頂き、この日は無事終了。
校長先生も熱心で素晴らしい人でした。
喜多方市の中学生のみなさんがどんな青春まるかじり☆な歌をつくってくれるのか今から楽しみです。

そういえば師範にも青春短歌ってあるんですか?

そういうイメージの歌人じゃないけど、けっこうあるよ。


修学旅行で眼鏡をはずした中村は美少女でした。それで、それだけ (笹 公人) 


君からのメールがなくていまこころ平安京の闇より暗し


青春の傷はときどき疼くからクレアラシルは捨てられずある



『念力図鑑』(幻冬舎)より


どれも人気の高い作品ですね。


中学生へのモデル授業は今回のみでしたが、あと3回大人の受講者向けの講座があります。
11月には市民対象の講演をやらせて頂くので、お近くにお住まいの方はぜひ観にきてください!


お疲れ様でした!
ラーメンは食べましたか?

中学校の校舎の「喜一中」というラーメン屋っぽい看板を見たら、 むしょうにラーメンが食べたくなって、
ラーメンを食うまで東京に戻ってたまるか!という気持ちになって、教育委員の方にわがままを言って、人気店に連れていって頂きました。

var_20080910061516.jpg 夢にまで見た喜多方ラーメン。

ンマーイ!

美味しそう!!

ということで、こちらのコンテスト↓の選考にも関わらせていただきます。
よろしかったらぜひご応募ください!

★愛の31文字コンクール★
「恋人坂・恋人岬」にちなんだ、「愛の31文字コンクール」を実施します。心に浮かんだ「愛」を自由に、豊かな感性で31文字に詠んでみませんか。皆様のご応募をお待ちしています。

■応募期限 9月30日(当日消印有効)
■応募規定 作品・住所・氏名・電話番号を書いて応募
【問い合わせ・応募先】
喜多方市熊倉公民館
〒966−0024 福島県喜多方市熊倉町熊倉字壇の前1511
TEL・FAX:0241−22−1801
【時事通信】(福島県喜多方市からの情報提供)


こちらもよろしく。


※9月30日締め切りです。
「NHK全国短歌大会」ジュニアの部 


ロシュ・ダイアグノスティックス主催
「好きな人に贈る 百人一首」短歌コンテスト


朱川湊人(小説)×笹公人(短歌)
「遊星ハグルマ装置」
更新されました!
今回は僕の短歌「昭和少年」です。
これも青春短歌だな。
ポプラビーチもリニューアルしました。
ぜひご覧ください!
< よろしく哀愁☆
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2008年07月10日

怒涛の映画デビュー!! 「その日のまえに」出演レポ

公式発表があったので、映画出演のレポートを書かせていただきます。

ひょんなことから憧れの大林宣彦監督の新作映画「その日のまえに」(原作・重松清)に出演させて頂くことになりました。
エキストラではありません。
なんと、永作博美さん扮するヒロインの兄役であります。

兄役と聞いても、当初は、画面をよ〜く見ていないとわからない隠れキャラ的な役だろうとタカをくくっていたのですが、いただいた台本を見たら、けっこうたくさんセリフがあってびっくり。暗記力がない自分にとってはかなりの量でした。
うれしい悲鳴を上げつつも、3日がかりでなんとかセリフ覚えたのであります。

しかも役名は、精六。
セリフは「バイナラ」のみ。

斉藤清六かっ!
「欽どこ」じゃないんだから・・・。


5月28日(水) 衣装合わせ

川崎のスタジオで衣装合わせ。
まずは、精六(僕)の奥さん役をやる柴山智加さんにご挨拶。
柴山さんは大林映画の常連。
彼女が出演していた「ふたり」や「青春デンデケデケデケ」などの名場面が頭をよぎる。

主演の永作博美さんと南原清隆(ナンチャン)さんにもご挨拶。
お二人とも、気さくでとても良い人。

そして、大林監督と12年ぶりの感動の再会!
二浪突入記念の傷心旅行で尾道ロケ地めぐりに行った時、大林監督がたまたま同じホテルに泊っていて、バッタリお会いしたのでした。
次の年に尾道に行った時も喫茶店でバッタリ監督とお会いしたのでした。それで、お会いするのは12年ぶり。
ご縁のある人とは不思議とこういう現象が起きますね。

監督の指示の下、衣装さんが役柄に合った着物とスーツを選ぶ。
大林映画の世界では、たいてい男は家で着物を着ている。
家長イコール着物姿というイメージが監督の中にあるのでしょう。


5月30日(金) ロケ

ついに「その日」が来た。

早起きをしてセットがある川崎の体育館へ。

スタッフのみなさんにご挨拶をしたあと、
小沢一郎あたりが休日に着てそうな紺色の着物に着替える。

共演の柴山智加さん(僕の奥さん役)と一緒に特殊メイクを受ける。
40代の頃と50代の頃の2回に分けてメイク。
メイクでみるみるうちに初老の男に変身していった。
var_20080711011434.JPG 特殊メイク完成!
代議士の休日ではありません。

覚えてきたセリフを頭の中で復習しているところに、
ADの人が急遽変更したセリフを持ってきた。
必死で覚えたセリフが、だいぶ変わっていて大いに焦る。
とにかく暗記が大の苦手なので、逃げたい気持ちになる。

カンニングペーパーを用意したのだが、本番で使えるかわからないので、最終手段として、V6の番組で見たMr.マリックの超記憶術を実行することに。
この記憶術は、人間は痛かった記憶は忘れないという傾向を利用したもので、体の部分に番号をつけて、そこに痛みのイメージを加えて覚えさせるという方法。
セリフのキーワードとなるのは「金」「病気」「保証」だったので、
目の中に金貨を詰められ、鼻の穴に鋲を入れられ、 口の中にコショウの瓶を詰め込まれ・・・というハードSMの責め苦のようなシチュエーションをイメージして、なんとか覚えることができた。

そして最初のシーンを撮るためにロケ現場へいざ出陣。
監督から演技指導もあり、いよいよスタート!
var_20080710224036.jpg var_20080710224240.jpg (ロケ時の写真撮影・大林千茱萸さん

カンニングペーパーを足元に置いたのだが、ちゃぶ台なのでカメラに映ってしまう。
「その紙どけてくださ〜い!」と助監督。スタッフも苦笑している。
いよいよヤバイぞ・・・・・・。
そこで、Mr.マリックの超記憶術を実行。
それでも、めちゃくちゃ緊張していたことも手伝って、
体の演技を覚えたら、セリフが飛んでしまい、 セリフを意識したら、体の演技を忘れてしまいで、NGを連発。
演技ってこんなに大変なものだったのか!
俳優って凄い!と今更思い知ることに・・・・・・。

これほど泣きたい現場に遭遇したのは、
近年では身延山でクマに追いかけられた時以来だろうか。
緊張のあまり1986オメガトライブのカルロストシキばりに(古い!)震えていたのだが、監督が「ナイフが無いふ」的なダジャレで和ませてくださり、 少し余裕が出て、なんとかようやくOKを頂いた。
この時、マシンガンのように繰り出される監督のダジャレは新人をリラックスさせるための武器であったということを知る。

電話で妹(永作さん)に激怒するというシーンだったのだが、
緊張の震えが怒りの震えに見えていることを祈るばかり。
var_20080710224201.jpg 超記憶術を実践中の筆者。
var_20080710224127.jpg 監督一流のダジャレに和む。

次のシーンでもセリフの変更があり、
またMr.マリックの超記憶術でなんとか乗り切る。
そして、またしてもNG連発で落ち込む・・・。
共演の柴山さんはさすがプロ。 どのシーンも一発でOK。

次のシーンでもセリフの変更があり、
(以下同文)
今度は体の演技がとても難しかった。

var_20080710224339.jpg
残すはラストの車の中でのシーン。
ここはセリフが短いので余裕だなと、「さびしんぼう」(歌・富田靖子)を口ずさんでいたら、 ADの人がやってきて、
次のシーンは号泣しつつ両手でおにぎりをむさぼり食いながら
セリフを言うという演出になっていることを知らされる。

号泣する準備はできていなかった!!!(江國香織風に)
もうやるっきゃないということで、喉に指を突っ込んで無理やり涙を流して、 そのあと11年前に死んだ愛犬のことを考えながら、
山下清画伯よろしく両手でおにぎりをむさぼりながらセリフを叫んだ。

カット!
「もうちょっと怒りをこめて号泣しよう」と監督からダメ出しがありNG。 最近あった怒りのエピソードを思い出して再びチャレンジ。

カット!
「妹をなくした悲しさも出そうか」と監督からダメ出しがありNG。
妹役の永作博美さんが本当に自分の妹だと思い込めばもっと泣けるかもしれないと思い、そういう人生をイメージをしていたら、「あんな妹がいたら、ちょっと、否、かなりうれしいよネ!」という具合に雑念が浮かんできて、頭の中でribbon時代の永作さんが歌い踊る映像が流れ、さらには、同じく乙女塾出身のCoCoの映像までもが流れてきた。続けて、CoCoといえば「ライブヴァージョン」って曲の曲名ヘンだったよなぁ・・・曲名にライブヴァージョンはないよなぁ。ライブヴァージョンのライブヴァージョンってなったらもっとまぎらわしいし、CD買わねえぞ!・・・などとしょうもない雑念が次から次へと浮かんできたので、慌ててかき消す。

そうこうしているうちに、おにぎりが4つなくなり、あと2つしか残っていないという状況に陥る。
今度NGを出したらスタッフのみなさんにかなり迷惑をかけてしまうので、大いに焦る。
周囲には山ほどのスタッフがいて、ADへの叱咤が飛び交う。
このADへの叱咤は間接的に自分に向けてのものだということはわかっていた。
号泣する準備もできていた。
そしてスタート!
カチンコが鳴る。無我夢中でやったので、どんな演技をしたのか全く覚えていない。

カット!
おそるおそる目の前を見ると監督がニコニコしながら両手でマルをつくっていた。
この時監督がつくったマルは、白鶴のCMの矢崎滋のそれよりも美しかったということを付け加えておきたい。
とにかく、この時の感動は一生忘れないと思う。

お疲れ様でした〜!の声が体育館に響き渡り、スタッフの方が
「これにて笹公人さん、柴山智加さんの出演シーンはすべて終了しました! お疲れ様でした〜!」
と言って体育館に拍手が響きわたった。
「あ、こういう場面「情熱大陸」とかで見たことあるゥ!」
などとシロウト丸出しなことを思いながら、
大林監督とプロデューサーの恭子さんと握手。
あたたかいお言葉をかけていただき、感激。
監督のお嬢さんであり映画感想家の大林千茱萸さんも「堂々たるものでしたよ」と褒めてくださった。
心臓は強いほうだし、物怖じしないタイプだとは思うのだけど、
今回のは本当に寿命が縮まるほど緊張していたのでした。

これにて、全4シーン、半日がかりのロケが終了!

最後に記念撮影。 var_20080711012156.jpg 板尾課長ではありません。


怖ろしくて自分の出ているシーンを見る勇気はありませんが、おそらく大林映画始まって以来の怪演・奇演になっているのではないかと思われます。
映画館で見た時、どうか僕のシーンでゲラゲラ笑わないでください。
涙なくしては見られない映画なので・・・・・。

「その日のまえに」(大林宣彦・監督)
は、公開は11月です! 
名作の予感がします。ぜひ映画館に観に来てください!
どうかよろしくお願いいたします!!!


「その日のまえに」
原作:重松清・著『その日のまえに』(文芸春秋刊)
映画脚本:市川森一
撮影台本 :大林宣彦 南 柱根
監督:大林宣彦
製作:?WOWOW ?PSC
主な出演者:南原清隆 永作博美 風間杜夫  

公式サイト



以上、怒涛の映画デビューでした。

よろしく哀愁☆
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2008年02月24日

お知らせと「和歌ドリル」講評

C調短歌に御用心!
笹師範です。

なんですかその死語と伝統詩型の奇妙なコラボレーションは・・・。

まずはお詫びから。

あいかわらず2冊の本の校正などで自宅にこもっておりますが、
ちょっと申し訳ないお知らせを。

『笹公人の念力短歌トレーニング』(扶桑社)
3月下旬に発売予定でしたが、
出版社の都合で、4月上旬に発売が延期となりました。


もうひとつお詫びを。

ページ数の都合で、「テレビ・テレビ番組」と「田舎・ふるさと」のお題を新たにまるごとカットさせていただきました。
残念ですが、仕方がないです。

で、「総評」は?

まだ「総評」にまで手が届きそうにないです。
本当に申し訳ないけど、もう少々お待ちください。

困った時のバックナンバーということで、
昨年、天久聖一さんとの朝カルの講座で行った
「和歌ドリル」の投稿作品の講評をさせていただきます。

俵万智さんの『サラダ記念日』の短歌の穴空き問題でした。
(輝かしい秀歌をこんなくだらないことに使ってしまって、俵さんごめんなさい。)


・この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「[      ]」  (俵万智)

                正解・ホテルカルフォリニア



恋人の運転するスポーツカー(推測)で海岸沿いの道を走っているというバブリーな青春風景を詠んだ歌です。
この時、恋人が「この曲」と決めてかけた曲とは・・・?

__________________________

<笹公人師範の回答>


「ヨイトマケの唄」 丸山明宏

「もののけ姫」 米良美一

「Bugってハニー」 高橋名人

「大きなのっぽのライブドア」 kobaryu
〜ライブドア2005年度忘年会バージョン〜

「さびしんぼう」 富田靖子
(ショパンの「別れの曲」に歌詞をつけた大林映画の主題歌)

「ラバウル小唄」(軍歌)

「エンマの数え歌」 麻原彰晃

「夜霧のハウスマヌカン」 やや

「北風小僧の寒太郎」 北島三郎&ひばり児童合唱団

「野に咲く花のように」 ダ・カーポ

「きんさんぎんさんの101回目の誕生日」 きんさんぎんさんとCOCODORS


________________________

短歌は予定調和になってはいけないとよく言われますが、こういったシチュエーションが決まっている歌ほど、いかに読者の予想を裏切るオチが用意できるかが勝負になってきます。
(俵さんの場合は、短歌に新しい風を吹き込むために、
あえてベタな感じでやったと思うので例外とします)
で、今回みたいな場合は、おしゃれなムードをぶち壊すようなソングを入れるしかないでしょう。

なるほど。

石黒謙吾さんの回答に「君が代」があったけど、国歌みたいな荘厳な曲も大変効果的です。
それか、むかしのB級タレントの企画ものソング。
これも破壊力があっていいです。
満員電車でイヤホンから音漏れがしたら恥ずかしいなぁと思うような曲を持ってくれば、まず間違いないでしょう。

そんなわけで、優秀回答を発表!

___________________
___________________


この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「[      ]」  
(俵万智)

「      」の中に入る曲名を答えなさい。


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まずは、あきえもんさんの回答です。

「荒城の月」 滝廉太郎

「魔王」(独唱)

「心の旅」(吉田栄作バージョン)
     
「それ行け! サマー・ビーチ」 よめきんトリオ

「シティ・コネクション」 エマニエル坊や


わかっているな、という感じのラインナップでした。

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かんちゃんさんです。

「そして伝説へ」 鴻上尚史

なつかしいなぁ。
いい線ついてます。


「わたし歌手になりましたよ」 浦辺粂子

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これは素晴らしい!
脱力と哀愁が交差する光と影のレイザリアムです。
95点

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帯一 鐘信さんです。

「私・湘南マタンゴ娘」 高田暢彦・川崎徹

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「天才・たけしの元気が出るテレビ」の企画モノ曲。
この間、川崎徹さんにお会いした時に
「マタンゴ娘のレコードは持ってますか?」とお聞きしましたら
手元にないとおっしゃってました。
誰かあげてもいいという人がいたら僕にお知らせください。


「カナダからの手紙」 平尾昌晃、畑中葉子

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沼尻つた子さんです。
 
デュークエイセス「ミレニアム・ボックス」

コーラスグループもアリだよね。
そういえばこの間、和田誠さんから(和田さんがたくさん作詞をしている)デュークエイセスのCDを贈っていただきました。


「すずかん・レボリューション」(鈴木寛参議院議員)

政治家とか相撲とりとかプロ野球選手とかが勢いで出しちゃった感じの曲も狙い目です。

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104heroさんです。

「山口さんちのツトムくん」

「みんなのうた」系の曲や童謡なんかも効果的です。

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中村成志さんです。

「般若心経」

テンション下がるなぁ・・・。

っていうかこれ曲かよ!

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魚虎さんです。

「リンゴ追分」 美空ひばり

一瞬にして車内を戦後に変えてくれます。

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最優秀回答発表!

最優秀回答は、

「わたし歌手になりましたよ」 浦辺粂子

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かんちゃんさんです!

おめでとうございます!
賞品はありません。


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以上です。
なんだか昭和の匂いがぷんぷんするコーナーでしたね。

昭和といえば、

3月1日(土)21:05〜22:55
NHKラジオ第一
「土曜の夜はケータイ短歌」

司会:魚喃キリコさん 歌人:笹公人 ゲスト:半田健人さん

企画は
「昭和短歌」
です。

若いのに昭和のカルチャーにやたら詳しいという共通点を持つ
半田健人さんとの初共演です。

3年前に、この番組で、岡田斗司夫さんとふかわサンと
「死語短歌」という企画をやって、凄く盛り上がったのだけど、
今回もあんな感じで盛り上がれたらいいなと思います。

「昭和短歌」といえば、

笹公人第三歌集『抒情の奇妙な冒険』(早川書房)

こちらは予定通り3月25日に全国書店にて発売される予定です。
昭和短歌も満載で、かなりの自信作です。
お楽しみに!!


歌集といえば、J-WAVE時代からの常連投稿者で、現在は、
僕も所属している短歌結社「未来」で活躍を始めた
笹井宏之さん(J-WAVE時代のペンネームは「ささね」)が歌集を出しました!

『ひとさらい』笹井宏之

爽やかなポエジーを感じる歌集です。
最近の作品のほうが好みだけど、これはこれで無防備な感じが魅力になっていて良いんじゃないかな。

『笹公人の念力短歌トレーニング』(扶桑社)
にも笹井さんの歌がたくさん載っているので、
楽しみにしていてください!

ということで、よろしく哀愁☆
posted by www.sasatanka.com at 05:43| Comment(4) | TrackBack(0) | 特別企画・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする