このままじゃ隔月発行になっちゃいますよ。
ヤバイな、それは・・・。
今回は仕事が忙しかっただけではなく、プライベートでも変動があったり、サーバーが落ちたりで、
非常にバタバタしていたのです。すみません。
「マイケルの秘密の部屋」
の「最優秀作品」について思い当たることがあったので、
今回はそれを書きたいと思います。
マイケルの秘密の部屋で君が見た
ステージ8へつながる土管
(かんちゃん)
マイケルの秘密の部屋にある謎の土管は、
ファミコンのスーパーマリオの8面につながっているという意味だと思いますが、
あえて「マリオの8面へつながる土管」としなかったところが良いと思いました。
なぜですか?
「ステージ8」って何かフリーメーソンみたいな秘密結社の階級みたいなものも匂わせるし、
新興宗教とかでも「ステージが上がった」とかいう言い方がありますよね。
そういう風に深読みができるところがポイント高かったのです。
マイケル、ついに「いくところまでイッちゃった?」という匂いもあります。
まぁでもある世代ならば「スーパーマリオの8面」だなと直感的にわかるでしょうが、
それでも答えが書かれていると、どこか味気ないよね?
マイケルの秘密の部屋で君が見た
マリオの8面へつながる土管
たしかに。
見たまんまの世界というか。
想像する楽しみがなくなってしまうというか・・・。
答えを言ってしまえば、歌謡曲的なわかりやすさにはまとまるのですが、その代わりに詩的な広がりは失われてしまうのです。
なるほど。
じゃあ歌謡曲の歌詞に詩的な広がりはないんですか?
いや、そんなことはありません。
優れた作詞家の詞には、ときどき詩的な広がりを感じるフレーズがあります。
たとえば、中山美穂の名曲「JINGI・愛してもらいます」
のこのフレーズにはハっとさせられました。
月面で宙返りした顔のくせに
マドンナを口説く度胸は表彰もん
「JINGI・愛してもらいます」 歌・中山美穂
作詞・松本隆 作曲・小室哲哉
月面で宙返りした顔・・・?
どんな顔やねん!
とツッコミたくなりましたが、
なんという絶妙な比喩だ!と感動したことがありました。
その時の僕の解釈は、
「酸素がない月面でただでさえ息苦しいのに、
さらにそんな場所で宙返りをしている。
彼女の前ではいつもそのくらい苦しそうな表情をしている。」
といったもので、
「それだけ緊張してたのかな?」とか、
「この少年、どれだけ純情なんだい!
そんな奴がよくマドンナを口説いたよな〜。感心感心。」
とか、いろんなことを考えさせられる素晴らしいフレーズだなと思いました。
しかし、数年後にふと、
体操で「月面宙返り(ムーンサルト)」という技があること、
そしてそれを使った塚原光男選手がミュンヘンオリンピックで
金メダルを取っていたということを知ったんです。
しかもググってみたら、苦虫を噛み潰したような塚原選手のその時の表情を映した画像が出てきました。
そこで謎が解けた。
これはおそらく、
月面で宙返りした顔のくせに
というフレーズは、
正しくは、
月面宙返り(ムーンサルト)を決めた時の塚原みたいな顔のくせに
という意味なのではないか?
と思うようになりました。
一瞬、感動は薄れて、なぁんだ・・・と少しガッカリしましたが、しばらくしてまた、でも凄いなぁと思いました。
なぜですか?
並の作詞家ならばこういった処理の仕方を選択していたでしょう。
オリンピックの時の塚原みたいな顔のくせに
ムーンサルトを決めた塚原みたいな顔のくせに
etc・・・・
これだと、意味はとりやすくなるけど、「なるほど」で終わってしまうよね。
はい。というか、これだったらミポリンも歌うのを拒否していたかもしれませんし、塚原さんも名誉毀損で訴えていたかもしれませんが・・・。
実はそういう理由なのかもしれないけど・・・。
この2つのフレーズについて言えることは、「スーパーマリオの8面」と「塚原選手」という答えを省略したことにより、詩的な広がりが生まれたということです。
答えを読者にあれこれ想像させることによって、歌の印象が強まったということなのです。
あえて省略するというのもひとつのテクニックです。
覚えておいてください。
21日の公開講座では、
大先輩である穂村弘さんに「短歌のポエジー」
についてもいろいろお聞きしたいと思っています。
同イベントで優秀作品を決める
付け句デインジャーNIGHT
第四夜「よろしく! ゾンビ先生」
の作品も募集中です!
長々と失礼しましたが、「総評」に移ります!
_________________________
まずは、
ラブタイタイさんです。
・銀色のナイフが光る ミルフィーユみたいに体を重ねた夜は
(ラブタイタイ)
・縁側で西瓜の種を飛ばすよう黒い言葉を君は連射す
スイカ×連射といえば、
高橋名人が浮かんできちゃいます。
・半熟の卵の黄身の薄皮の一枚ほどで保つ平静
・ユニクロのフリースの青くぐもってひと冬の恋を脱ぎ捨てる朝
・森色の入浴剤につつまれて春待つ熊の眠りを眠る
玄人っぽい表現です。特に下の句。
・何色の糸で紡がれ行くのだろう 君へと続くシルクロードは
・春一番ピンクの傘が舞い上がりメリーポピンズ風を読む午後
・ピンヒールが赤い絨毯進み行く ひとりシネマを観る夕間暮れ
・狼は蒼き森に目を閉じる 瞼に月を映したままに
言葉を選ぶセンスが良いです。
初心者にしては上手すぎます。
_______________________
砺波湊さんです。
・九時間半眠ったあとの真昼空あおくてあおくて気が遠くなる (砺波湊)
・七階の出窓にハトはぶち当たりガラスにこさえたまっ白なひび
シュールです。
・そのままでいいよと幽かに告ぐるごとグラスには白く濁った氷
・タンポポの黄色がまぶしく見える日だ 上手に諦めることをおぼえて
・グリーンのくじらが空にいるような打ちっぱなしのネットのたるみ
順調に腕を上げていらっしゃいます。
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小野伊都子さんです。
・黒かった君の陣地をまっしろに塗り替える午後 オセロも恋も
(小野伊都子)
・ここでなら無色になれる カラフルな自我脱ぎ捨てるコンビニの中
・この恋はマーブルチョコだ てのひらで溶けてはがれたピンクがにじむ
・色のない夢を見ていた あきらめの悪さはきっと強さにもなる
下の句のモノローグが魅力的です。
・そら豆をざるにあけたら立ち上る湯気もさみどり 私は私
・春風がマッチを擦って街角に白木蓮の灯火ゆれる
いい感じです。
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下北佐古さんです。
・さよならは真っ白であれ 漂白をしても消えないものなんてない
(下北佐古)
とてもいいです。
・教室で孤独気取って浮く私戦隊ものなら黒のポジション
・戦争の終わった街で恋文に赤い便箋選べる平和
「平和」は、言わずもがなです。
・金色や銀色、まして桃色の吐息も吐けず今日も暖冬
___________________________
瑞紀さんです。
・なぜ人は急ぐのかしら咲き出した白木蓮に気づきもせずに (瑞紀)
・駆けてゆく夢のしっぽをつかむとき指の先から七色になる
・この春の限定色という紅(べに)で眠りこけてたときめき起こす
・「さみしくはないか」と問えば「別に」とう声色のなきメール淋しも
・我が黒く塗りつぶしたる画用紙にあなたは白き花弁を降らす
・とりどりの花があふるる彼岸会に父の墓前はモノクロならむ
・吾妻橋の赤き欄干から恋を水葬のごと流しきにけり
正統派な歌ですね。
しっかりとした詠いぶりに好感を持ちます。
__________________________
てこなさんです。
・茶畑の上吹き抜ける風のように目には見えないみどりいろがすき
「目には見えないみどりいろ」
という表現にハッとさせられました。
・餃子より真白き皮ではりついて君の明日まで焦がしてやろう
・もし君が切り出したならぶっかけるつもりでたのむ黒すぐりジュース
・ティーバッグ引き出すようにボトボトと茶色く流す嘘泣きナミダ
「引き出す」よりも、
もっと適切な言葉があると思います。
・先端から赤く変わってゆくイチゴ 白い部分を彼は求めた
なにか暗示的。
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成長著しい
宮田ふゆこさんです。
・セピアにはなりきれてない思い出に似たざくろ石を指からはずす
(宮田ふゆこ)
・薄闇にのまれてしまう きんいろの夕日に焦がれ伸ばした指も
・何も期待しないでくれと無果汁のメロンソーダの緑はきれい
着眼点が良いです。
・なぞるふりで朱を入れられてそれはもう私の言いたかったことじゃない
習字にかけているのでしょう。お上手です。
・匂いたちそうな想いを閉じ込めて白ブラウスのボタンを留める
・色とりどりのお手玉ほどけばこぼれ出る時間はこんなにつぶ立っている
・たけだけしく萌えろ新緑なまぬるい春の痛みを食らい尽くして
・欲しくって諦めたのはうす青いラムネのびんのビー玉だけよ
____________________________
iCHiさんです。
・すきなのはきいろなのよと幼き子狂(くるい)色なりひよこ色なり (iCHi)
・信号は俺様のため変わるって知っているかと十三の君
・銀色の文庫本読む教室にいじめはあった片恋もあった
ほとんど死語になっている「片恋」という言葉が不思議と馴染んでいます。
銀色の文庫は何の本だったのでしょう。
・この家の窓鉄格子マジックの名前かかれた青いスリッパ
謎があって良いです。
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佐田やよいさんです。
・寄り添った時間のように黒ずんだ指輪を冷えた夜空にすてる
(佐田やよい)
・とめおいた時間のようにアルバムのなかで薄れる残照の色
色褪せた写真が浮かんできて、
とても良いです。
・路地裏のピンク映画のポスターにつないでた手をはなした僕ら
甘酸っぱい青春短歌。
・また今日もブルーハーツを聴きながら乗るべき列車をさがしています
今回、どの歌も良かったです。
___________________________
今夜はどんな宴が行われているのでしょうか。
暮夜宴さんです。
・彼岸花色のゆうぐれ寂しさを振りきるように蹴飛ばす小石
(暮夜宴)
・やわらかな君の視線の先にある落ちた椿のいさぎよい赤
・ちっぽけで軟(やわ)な心が吐き出した黄色い海で溺れています
・銀色のシャーボで解いた数式にためらい傷を残す消しゴム
いいとこついてます。
シャーペンに付いてる消しゴムが
きれいに消せないのはなぜなんでしょう。
・箱庭のハツカネズミの赤い目が訴えかけてくるモノローグ
・駄菓子屋の角を曲がれば懐かしいスモモ色した夕焼けにあう
・いつまでも白雪姫になれなくて小人その3または継母(ままはは)
・触れられぬ髪に緑雨がふりそそぐあの子がほしい花いちもんめ
___________________________
倖村智美さんです。
・前髪を真っ赤に染めた夏 陸じゃ息ができない 金魚になるわ
(倖村智美)
・デニーズでくすぶらせてた情熱をブルーレットが吸い込んでいく
「ブルーレット」が効いてます。
・地味だけど一応変身してますよ 茶レンジャーって名乗る戦士に
___________________________
紫塚れをさんです。
・ミステリーサークル夜な夜なつくりし老人の胸によみがえる小麦色の日々
(紫塚れを)
・リストラを宣告された男の瞳一瞬冥王星の色をおびしや
・彗星の欠片でロックしウヰスキー宇宙バーにて琥珀色の微睡み
・タイムマシンとはならなかった引き出しにドラえもんのキーホルダー赤さび色の
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やっと男性が出ました。
酒井景二郎さんです。
・呪詛ひとつ鞄に詰めて來た秋葉 つり目メイドの服は漆黒
(酒井景二郎)
・草原の空氣サラダの中に立ちみどりみどりを吸ひ込み盡くせ
・午前二時バーのネオンがじれてゐるガンズ・アンド・ローゼス色の街角
・スポーツのやうに戀する者たちのくるぶしの桃色の速度よ
・吉祥寺緑萌え出す公園の意外に通る鴨の濁声
・化粧する若人どちのさはなるを地獄色などと言ふのは如何
酒井さんの歌はどれもちょっとずつ珍妙で、
そこが味になっています。
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富田林薫さんです。
・シンデレラのそんざいとしてのこされるガラスの靴にうつる虹色
・気をぬくとたいせつなものぽろぽろとこぼれおちてく水色のかばん
・まちかどは青いっしょくでぬりつぶしわたしは海にうみになります
・手のひらにすいみんやくはあふれだすグラスにのこる赤いくちべに
・どこまでもいてつく街にいだかれて白いしろい冷蔵庫としてくらす
今回の中ではこの歌が一番好きでした。
・青りんごほおばりながらくりかえす夕ぐれのまちはすっぱいってさ
・ああ、わたしにじゅうよん色クレヨンのつかわれないままのこる灰色
・ふたしかなものかきあつめて約束の黄色いきいろいはなたばにして
今回、打率が高いですね。
ひらがな多用短歌が向いてるのかもしれません。
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笹井宏之さんです。
・目の奥に黄砂のけぶる土地があり雨を、君の雨を待っている
(笹井宏之)
・水面を緋鯉おおきくひるがえり別れ話は白紙になった
イメージが鮮やかで、とても良いと思いました。
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どんどん腕を上げている
西巻 真さんです。
「首都赤変へのオマージュ」
・革命を未だ待ちをりゆふぐれが終はりて黒き夜が来たるとも
(西巻 真)
・その洞に紅蓮の炎燃えゐるを知らざるや子は森に憩ひて
・をとめらの喉こくこく動きつつ白昼未だ続く君が代
「こくこく」の後に、
「と」を入れてリスムを整えたほうが良いのでは?
・鶏卵をべちべち床に叩きつけ首都空爆の黄なる悦び
結社で鍛えられるとやっぱり上手になりますね。
「首都赤変」とは高島裕さんの第一歌集。
このオマージュ、高島さんもきっと喜ぶでしょう。
そういえば結社に入りたての頃、高島さんにはしごかれたなぁ・・・。
____________________________
はせがわづさんです。
・明日はもうないふたりです 橙に染まってく街でさよならをした
(はせがわゆづ)
・海色と空色の境界線が消えゆるり溶けゆく私の呼吸
・欲望を示す紫はじまったばかりの夜に思い出すこと
・七色のしゃぼんがはじけて映える虹、可視光線に貫かれて朝
・冷めきったコーヒー無言で掻き混ぜる ブラウンシュガーは底に沈んで
カラーが統一されていて、
良いと思います。
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嶋田電気さんです。
・春色のベンチに座っていた頃はすべてがうまくいくはずだった
(嶋田電気)
・「キンアカでいいでしょ?」なんて意匠家に云われたようなさよならですね
金曜の赤坂って意味かな。
・ぬらぬらと流れつづける銀色をながめるだけの微熱なのです
・廃屋に置かれたままの飴色のプランターにも春はきており
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みうらしんじさんです。
・銀色のジャンパーを着て雪の日にティッシュを配る少女のポエム
(みうらしんじ)
・あのひとの青い車の助手席でスピッツを聴く夢をみていた
「青い車」が良かったです。
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さかなさんです。
・白波の砕ける先を眺むれば黒絨毯に翁立ちけり (さかな)
映画のワンシーンぽいです。
・紫色が胸に広がる感覚を「切ない」と書き君に送信
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regimantasさんです。
・おしろいとミニ・スカートにキャミソール触れないでいてわたしのにきび
(regimantas )
・勉強も運動もでき恋できぬ寿司箱のすみに住む河童巻
「河童巻」に妙な説得力があります。
・三車線並びし道でひかれたわたし人種の信号黒白黄色
・地球のすみロシアンパブに通いつめ小野小町の肌は白きか
___________________________
魚虎さんです。
・マグリットの画にある如き青空を切り抜かんとす美術室の窓
(魚虎)
・桃色が似合うと云われし少女期の我は紺の水玉好めり
・右膝に紫陽花咲きて花柄のミニは箪笥の肥やしとなりぬ
紫陽花はきっと痣の暗喩でしょう。
・グランパスレッドの赤を沢入の血で染めていしJ創生期
(※沢入=沢入重雄)
・〈水色の10番〉いつしか〈赤鯱の10番〉としてフィールドに居り
・誠一郎と佑樹の父はユニフォーム上下で色を違えて着たり
・ヴェルディ星より来たるラモスの肉体に緑色の血脈々と流る
このバージョンがいちばん良いと思います。
・ライダーのマフラーの色知らぬ子がカラーテレビに焦がるる昭和
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かわらさんです。
・雪の降る庭にたつなり姐さんを寝取りし男の銀色のまら (かわら)
・雪山のごとき乳房に桃色のふたつの意志が揺れていませり
・切り裂いてすすり抜いても溢れ出づ君の喉から真っ赤な嘘は
・フラメンコギターの先生セルビンのワイシャツにつきし赤い蝋燭
・オレンヂの火花飛び散る工場の片隅に眠る防空頭巾
・サングラスとマスクを森に投げ捨てて戻る 色白の青年に
___________________________
新井蜜さんです。
・見つめればほんのり染まる耳たぶの膨らみかけた花蕾色 (新井蜜)
・真夜中の居間に一人で座りいて女は赤い目にて振り向く
・コツコツと距離を保ってついてくるハイヒールの色を想像している
・空っぽのきみのベッドの温もりに溶けだしていく白昼の夢
・中指の付け根の白い傷跡の痛みを思い出せないでいる
___________________________
ももや ままこさんです。
・神様に内緒で遊ぶ子供らはカボチャ色した月に照らされ
(ももやままこ)
・エンゼルが金か銀かを問う女神(未開封だぞ)吾を試して
・生脚よ初夏の香りを含んでるセーラー服の真っ白なこと
謎の切れ字が効いたかも。
・マタニティーブルーという名のカクテルがあるなら今日はそんなため息
・胃カメラがずんずん映す吾の中 艶々桃色キスしたいかも
___________________________
かぶともしさんです。
・星色の砂場の前でこの国の未来を思う小鳩が凍死
(かぶともし)
・海の見える病院前のバス停に根元だけ黒い髪の子が立つ
おもしろいかも。
・熊の音に雨戸開ければ七色にもんどり光る御座敷列車
なんだかよくわかりませんが、魅力のある歌です。
___________________________
しらぬいまちこさんです。
・真っ白なスクールソックスはいといて黒い言葉を吐いたらだめじゃん
(しらぬいまちこ)
・まあだだよもういいかいもういいよ赦され白き経帷子に
___________________________
水面走さんです。
・伸びる影までも朱色に染めるよな君が写した夕日の色は
(水面走)
・好きなんだ大きく書いてすぐ消したあの冬の日のホワイトボード
・つながった手の反対のリンゴ飴青い浴衣に見え隠れする
・検問で吐く息少し弱くする若警官の目の色変わる
・妹と過ごした日々を回想すお色直しの時間じゃ足りず
・ふるさとの白く湧き立つ梅の香に包まれ僕は記憶を辿る
意外と正統派ですね。
よかったです。
__________________________
異能兄弟さんです。
・真っ黒に髪染められて母さんは少しちぢんで戻って来たり
この感覚、なんかわかります。
・さみどりの仁徳天皇陵のなかマクドの在りて微笑む店員
どこにでもあるマクドナルドですが、
そんなところにもあるの・・・?!
・桃尻の起承転結 憔悴の飯島愛がT字路に見ゆ
作意がちょっと見えすぎかな。
・半鐘とともに盗られし妹の青銅製の貞操帯よ
・中華屋の油まみれの崩し字の誰かの色紙「まずい」と読めき
・ぬばたまのソース垂らした十円のかがやく色を青春という
おもしろいけど、ちょっと惜しいなと思いました。
「ぬばたま」という言葉は黒いイメージが強いので、
「かがやき」に結びつきにくいのです。
・XY染色体をもつキャバ嬢XXちゃんは馬田徹男(まだてつお)なり
××は、ふつうに「レナ」とか「みゆ」とかそれっぽい名前にした
ほうが良かったと思います。
_____________________________
蝶ちゃんさんです。
・真白きキャンバス染める色選び悩めるうちに散りゆくサクラ
(蝶ちゃん)
写生大会のワンシーンでしょうか。
春の中学生のイメージ。
・授賞式ヤマトナデシコ落選は無理して染めたブロンドのせい
・何となく黄色と思うの私だけ?オナラした後まわりの空気
アニメとかでも黄色ですよね。
この感覚は世界共通だと思います。
___________________________
水野加奈さんです。
・タワレコの黄色い袋に入れてあるサマージャンボのバラと連番
(水野加奈)
そういう袋に入れたまま、
忘れがちなんですよね。
・ファミレスで何故盛り上がる?バリウムを飲んだその後の白い話は
・赤い旅団と落書されたパスポート 従兄はついにハワイに行けず
・よろしくと勇退したのは院長と待合室の「ブラックジャック」
・昨晩の夢モノクロで短くて名前を呼べず抱きしめもせず
・無限大記号のかたちで教室の隅に落ちてた黄色い輪ゴム
「∞のかたち」としても良かったと思いますが、
これは好みの問題でしょう。
・緑黄色野菜みたいな君と居てフライドチキン食べたしふいに
ないものねだりも思い過ごしも恋のうちです。
___________________________
そうがわさやこさんです。
・寒空に蓮華の色は濃くなって 地球がおかしくても変わらずに
(さわがやさやこ)
・名前こそ知らないけれど黄色くて小さな花が春を告げゆく
・桃色の片思いなんてどんなもの?そんな恋愛したくもないけど
・白無垢にその身をつつみ微笑んで旅立つ姉はどすぐろくって
・夕暮れの雲の隙間に映されたオレンジの幕引いておうちへ
____________________________
タイラー&トマソンさんです。
・七色の魔球を操るピッチャーに果敢に挑む透明バットで
(タイラー&トマソン)
・夕焼けと夜空の間の赤紫 飲み干すカシオレ 敗れた合コン
一字空けにしてみました。
このほうがいいと思います。
_________________________
そう蛸さんです。
・青ざめた記憶を肌にとどめたらすこしはドラえもんになるかな
(そう蛸)
・ねれなくて布団のなかでおきているLEDの色をみている
___________________________
ヒゲ山さんです。
・ひきこもるニートの未来予想図は色鉛筆の白で描かれ
(ヒゲ山)
本人にしか見えないのでしょう。
・永遠に青い私でドブネズミ色の地平を駆けていきたい
___________________________
長田絵理子さんです。
・青春の青は憂鬱示すブルー 思春期なんか消えてしまえ (長田絵理子)
・初めての紅を唇に差した日の胸の痛みをまだ覚えている
・「ピンク色好き」と言える彼女らを羨む擬態で許してもらえる
・透明のマニキュアを塗る姑息さに惹かれてやってくる男なら×
にっけん(教育出版)ではお世話になりました。
みなさまによろしくお伝えください。
____________________________
朝倉ここさんです。
・ピンクしか着なかった姉のおさがりのせいにして僕は「私」になった
(朝倉ここ)
・隠したい−。見つけて欲しい−。真夜中に無色透明のペディキュアを塗る。
____________________________
イマカコさんです。
・アラスカが国名だって信じてたオーロラみたいなきみの顔色
(イマカコ)
・色という漢字の元を知ったからeroticismに納得がいく
___________________________
穂ノ木芽央さんです。
・汝(なれ)の背に媚薬の小瓶握りしめ 春 くれなゐの灯絶えてのち
(穂ノ木芽央)
・廃墟かと紛ふ家並の物干しに夜明け待ちわぶ黄色いシャツよ
・クリックでセピアモードにしませうかこのくちびるも指先の赤も
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・空なのに水の色しているから逆さに見た海より優しくて (シロウサ)
・男の子の色に憧れていました 潔くって叶わなくって (スズキロク)
・問1でミトコンドリア描けと言うとりあえず緑のペンを手に・・・ (104hero)
・あなたって忙しい人 七色の用事を並べて今日も去り行く (オカムラミキ)
・黄のシャツをのび太が着なくなったころ僕の街にもできたユニクロ
(カー・イーブン)
・ハッとする人はなにげに青空に向かって自分をさらけだす人 (七つの水仙)
・慰霊碑の白一輪に手を合わす少女の胸にケロロ軍曹 (本郷敏吾)
不謹慎なのかそうでないのか、微妙なところ。
・オレンジがオレンジ色をしてるなら俺は俺色 俺らしくあれ
(二葉吾郎)
・500色の色鉛筆を持つ少女をずっと待ってた灰色村で (バッコス☆あきら)
・すべてのものが色に観えるってきみをそこまで導く手の震えも? (加賀葡萄)
・佐渡の風朱鷺色の羽はばたいてひらひらゆらり天に昇りて (雲母音)
・真っ白な雪に足跡つけるよう、汚してみたいあなたの心 (月村心姫)
・あまりにも色っぽいので告白を急いで終えた恋はモノクロ (帯一 鐘信)
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今回もたくさん投稿してくれた
あきえもんさんです。
・置き場所に困りてピンクパンサーを死体のごとく鴨居に吊るす (あきえもん)
・少年は黄緑色の洟垂らしキッコロのごとく穴へと還す
・我の名を思い出せずに金色の階段上る麻酔薬の夢
・桃色の片思いとはあれやこれ独りムヒヒと笑い出すこと
・誤って黒木香と口にする瞬間に似た沈黙があり
30代以上の男性は、うっかり言い間違えることがあります。
・若葉色のシャツの背中に抱きつけば大草原の匂いが満ちて
・メタボリックパワー全開! 体内を哀しく変身させる黄レンジャー
・守られることなく独り生きる日の武装としての赤き唇
____________________________
今回も独自の美学を感じとれる
鶴太屋さんです。
・白き露地を猫の貌して来につれば秋刀魚焼くる香冴ゆる良夜ぞ (鶴太屋)
・漆黒の地球凍れる大寒のお達者くらぶベーゴマ大会
・友無き日かなしみ憩ふ緑風荘うらに仔犬を抱きて滂沱たり
・磊落をよそほふ同僚(トモ)の白き影銹(さ)びしヤカンが秋の陽の中
・師の淡き影踏みつければ不意に昏れ俺は黄桜の酒に華やぐ
・小麦いろの肌のマブしき十五歳菜穂子はイルカの海を身に有(も)つ
・睦ハウス庭の白梅夕風に薫りて寒の熱の身体(み)恋ほし
・熱燗のうつしみ過ぐる軒先に黒猫眠れり昔のごとかり
・青き眼の仁王老いたり門前に焼き芋屋来たりショーバイはじむ
・夏の火焔樹截り倒さずんば紺碧の仁王の尿(ゆま)る音が聴きたし
仁王の尿る音・・・。
ドドドドドドーッ!て感じ?
・嗄れがれのこゑほんのりと紅(こう)ふくみ夏の座敷に鮎を食(た)
・燗酒の咽喉(のど)灼くうつつ酒舗のうち黒猫眠るは昔のごとし
・酔ひはてていよよ一縷の正気冴え狂気とまがふナイフしろがね
・昼酒の胃の腑涼しききさらぎの郵便ポスト赤く佇ちゐる
昼酒に酔った時の感覚が鋭く描かれています。
・棚に犇く書(ふみ)の黴くさきを愛し『青猫』もとめる寒の古書市
・ここ過ぎれば京(みやこ)廃れて霊媒師の姉の居館にくれなゐの蔦
・鉄屑の峨峨たる砦は蠅の王ひねもす睡る緋の襤褸(ぼろ)につつまれ
・ほだ木には露の椎茸太りをり蒼き月光浴び一途なれ
・朱欒(ざぼん)色の黄昏われを打ちのめし泣かせてくれる寒蝉のこゑ
・弟切草のはなびら淡き黄をふくみ胃の腑の唏(な)けるひもじさにあり
・風さわぐ烏滸(をこ)なる夏ぞ掏摸(スリ)の政余罪追及みどりの夜に
・鬱金の半纏風にはためきゐたりけり世界尽まで咲きつづける薔薇
・寵児得て一瞬玻璃に父の影 墓域にひろがる夕霞あかね
・寒すずめ朝(あした)転(まろ)べりしろたへに身は浄まりて銀色の霜
いつも思うのですが、
漢字と平仮名とカタカナのバランスが素晴らしいです。
__________________________
松本響さんです。
・パレットのザク色を見て少年の手に持つ筆に力が入る (松本響)
・夜空には夜空としてのプライドがあるから黒はそのままでいい
・青白い表情をして廃校に体育座りの柳生一族
不気味ですねぇ。
・青筋が立たない君はロボットで怒怒怒怒怒怒と十六連射
・未来から来た子が描く海の絵に必要なのは赤いクレヨン
年中「赤潮」状態ってことでしょうか。
・むらさきに生まれてきても食べるからきみと見上げるりんごのなる木
・玉手箱の蓋をあければ視界には筑紫哲也の鮮やかな銀
・縦笛の音色でひらくパンドラの箱にあなたの温もりがある
・さよならのチャイムが鳴れば空腹の赤いクジラが街を飲み込む
・手がかりはきみの前歯にしがみつく最高級の青海苔だけで
_______________________
今回は圧倒的に女性陣が元気だったね。
そうですね。
男よりもファッションにこだわる女性のほうが
色にも敏感なのかもしれません。
良い作品が多かったですね。
レベル高かったです。
これからもこのレベルを保ってほしいです。
お知らせです。
本日、4月11日(水)
夕方18:00〜18:40
NHK BSハイビジョン
「マンガノゲンバ」
に出演しています。
よろしかったらご覧ください!
よろしく哀愁☆