待ちましたよ〜!
首を長くして。
おまえの首の長さは生まれつきだろ!
ということで、
なかなかまとまった時間がとれず、
大変遅れてしまってごめんなさい!
まだかまだかと毎日チェックしてくださったみなさん、
ありがとうございました!
このプレッシャーが短歌Blogを続けていく原動力になってます。
ほんとですか……?
そのプレッシャーに負けて逃げないでくださいよ。
いろんな短歌コンテストの選者をやっている関係で、毎年この時期は、何千という応募用紙がテーブルの上に並んでいます。
いま「総評」をやらないと、来年になってしまうと思い、強引にUPすることにしました。
そのため選評が少なめですが、ご了承ください。
今回の「日本昔ばなし」ですが、
危惧していたとおり、
昔話のあらすじを説明したものや、
ストーリーの焼き直しが多かったです。
たとえば、
「みそ五郎伝説」
・「こがん風負けられんばい」みそ五郎 船を引っ張り村人助ける
(はづき生)
というような歌です。
こういった歌がなぜダメなのか
『念力短歌トレーニング』
の「SF」などのページで詳しく説明していますので、
読んでいないという人は(ま・さ・かいないとは思いますが)
この機会にぜひ読んでみてください。
SFとか都市伝説とか昔話とか
そういう物語系のお題はやっぱり難しいのですね。
物語に呑み込まれないように気をつけて、
匂わせるにとどめるというのがコツかと思います。
なるほど!
Blogの故障がまだ直らないので書き下ろした原稿もUPできず、選歌もなかなかはかどらず、おまけに風邪もひいてしまい、
元気をなくしかけていましたが、
10月27日の「朝日新聞」朝刊「秋の読書特集」の
架空の全集を組むという企画で、
細野晴臣さんが
「音楽が聴こえてくる本全集」
全10巻のうち、第5巻を『念力姫』にしてくださっていたので、
また元気が戻ってきました。
製作期間が約2週間で、勢いでつくった本なので、
まったく自信がなかったのですが、
意外と「これが一番好き」という人もいて、不思議な本です。
なんといっても「神様」である細野さんに選んで頂けたことがうれしかったです。
自分の中でのこの本への評価も変わりそうです。
コメントも、YMOのおもしろ精神を受け継いだものという感じで書かれていて、感涙ものでした。
『念力姫』笹公人・著
(KKベストセラーズ 1680円) 2005年・刊
まだ読んだことがないという方は、ぜひこの機会に読んで頂きたいです!
絶版になるその日のまえに宣伝しておきました。
いよいよ明日、11月1日から
「その日のまえに」(大林宣彦・監督)
が全国で公開されます!
明日は角川シネマ新宿で舞台挨拶もあります。
師範も舞台に上がるのですか?
いや。上がってもいいと言われたけど、
僕がいたところで「誰こいつ?」という感じになるので、
客席から(立ち見で)応援することにしました。
とにかく素晴らしい大傑作なので、ぜひ観に行ってほしいです。
パンフレットには映画のオマージュ短歌が載ってますので、
そちらもよろしくお願いいたします!
映画を観る前に大林監督のこのロングインタビューを読むと、より楽しめると思います。
『わしズム』秋号(小学館)
絶賛発売中です!
連載「タイムスリップ31」、今回は「昭和の健康法」です。
では、「総評」にいきます!
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まずは、
てこなさんです。
「おむすびころりん」
・ねずみの巣みつけたとき用おむすびを持って家族で山登りする
(てこな)
「かさじぞう」
・やってくと決めたの地蔵に笠ぜんぶ捧げてしまうようなあなたと
素朴な良い歌です。
「鶴の恩返し」
・キッチンで今夜のために抜く体毛 人妻はみなひそやかに鶴
「天女の羽衣」
・十枚の離婚届を羽衣のようにまとって妻参上す
「はなさかじいさん」
・ぽやぽやとシロの冬毛も舞うだろう灰で咲かせた桜散る日は
「ぽやぽや」というオノマトペがよかったです。
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岡本雅哉さんです。
・羽衣のようなボディコン身にまとい天女であった妻はいづこへ
(岡本雅哉)
少し前のジュリアナ復活騒動を思い出しました。
・雪おんなみたいな妻がなんだって冷房をすぐOFFにしたがる
・寄る辺なき着たきり雀は漫喫でインターネットにつづらを隠す
いまの時代、コインロッカーに預金通帳を入れたりとか、
あると思います。
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ヤマダワタルさんです。
・雪女の見初めるきこり役として抜擢されし大沢たかお
たしかに合いそう。
・玉手箱開きしやうに十年は消え去りバブル貴族の白髪
・ああこんな顔をしてたなサンダルを脱げばのつぺらばうの足裏
・欲張りが悪徳でなくなりてよりすべては「むかしむかし」となりぬ
この歌の上の句に書かれていることが、
日本人が劣化した原因のひとつでしょうね。
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伊藤夏人さんです。
・そう言えば何でこんなに僕たちは桃太郎さんに仕えているのか
洗脳が解かれつつあるお供たち。
・きびだんごふたつで僕のお供らは買収されてしまったようだ
・砂浜で助けなければゆっくりと歩めましたかもしもし亀よ
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中村成志さんです。
「さるかに合戦」
・いま栗が爆ぜたところか台本を袂に仕舞う屋根上の臼
(中村成志)
失敗は許されないという緊張感が伝わってきます。
「桃太郎」
・包丁の持ち出されくる気配聴きそつと片へに寄る桃太郎
「金太郎」
・上手投げ、おかっぱ、丸きお尻の絵(あれは欲情だったんでしょう)
「浦島太郎」
・浦島は叩きつづけるあの子らの名の刻まれた亀甲墓を
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渡口 航さんです。
・母鬼の桃太郎語り凄まじく眠れぬ夜に桃は熟れゆく
(渡口 航)
・浦島太郎宇宙飛行説展開し老物理教師ある日消える
「ある日消えたり」にしたほうが、
まとまりが良いです。
・渋谷のヤマンバもはや死語となり安達ケ原にただ風が吹く
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松木 秀さんです。
「因幡の白うさぎ」
・日本にもフランス人はいたらしく兎の皮を剥ぐグルメかな
(松木 秀)
・じいさんのこぶは生物だったかも『こぶ天才』を読みつつおもう
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西畠勇氣さんです。
・ブルガリとプラダとシャネルとカルティエを「月に帰る」と受け取らぬ君
(西畠勇氣)
・「打ち合わせ」月火水木埋め尽くし日曜だけが耳なし芳一
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外神田外堀( ´・ω・)江戸秋葉原狂歌師さんです。
・子供らの夢は容易く転がされ金太郎から麻薬反応
(外神田外堀( ´・ω・)江戸秋葉原狂歌師)
金太郎のあの格好は、
たしかにイっちゃってるよね。
『さるかに合戦』
・仇討(あだうち)の昔話は喜んで死刑制度の賛否はどちら
意外と鋭い。
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やましろひでゆきさんです。
・なよたけのかぐやのほしいものリスト最後の最後にどこでもドアが
(やましろひでゆき)
「竹」にかけて「タケコプター」にしたほうがよかった。
・十二支に猫が入ってない訳を教えてあげるからウチへ来ないか
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みうらしんじさんです。
・マンゴークッキーお腰につけて全国を行脚している南国太郎
(みうらしんじ)
・しろたえの家具屋の娘と抱(いだ)きあう 月にものぼる心地しながら
宮崎ではありがとうございました!
マンゴーゼリー美味しかったです。
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暮夜 宴さんです。
「おむすびころりん」
・転げたらどこまでも追えおむすびは そこから物語は始まる
(暮夜 宴)
「鶴の恩返し」
・おバカでもいつも一生懸命なつるのが島田に恩返しする
そのうち『つるの恩返し』(つるの剛士・著)というタイトルの
エッセイ本が、扶桑社から出そうな予感……。
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砺波湊さんです。
・件名:いま 本文:川に浮いてたよ 巨大な桃の写メつきメール
(砺波湊)
なぜかリア・ディゾンのビッグピーチ発言を
思い出してしまいました。
・海べりの慰霊碑に手を合わせたり名に桃の字の多き一族
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104heroさんです。
「金太郎」
・銃刀法違反動物虐待と下半身露出により逮捕!
(104hero)
おもしろい発想の歌ですが、「!」はいらないです。
歌の中に「金太郎」の文字を入れたら、さらによくなると思います。
「舌切り雀」
・かわいがる子雀の名「モモ」と「ハツ」何を語るや婆様(ばさま)の笑顔
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わだたかしさんです。
「浦島太郎」
・子供らに囲まれている亀助け その親たちに囲まれ泣いた
(わだたかし)
いま話題のモンスターペアレントを
暗喩した歌でしょう。
・会計が終わって急に老け込んだ 夏の想い出「スナック竜宮」
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山口ヤスヨさんです。
「浦島太郎」
・一度くらい大きな葛篭開けてみて後悔とかをするべきだった
(山口ヤスヨ)
「さるかに合戦」
・もし君が牛糞役でなかったらつきあってない臼の私と
意外なところに着地させていて、
よかったです。
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長田絵理子さんです。
「かぐや姫」
・運命(さだめ)さえ忘れる恋を望んだの誰にも告げず月へゆきます
(長田絵理子)
「鉢かづき姫」
・できるなら鉢をかぶって過ごしたしビン底眼鏡をとれない私
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たみさんです。
「金太郎」
・金太郎クマにまたがる絵の下に「よいこのみんなはまねしないでね」
(たみ)
「よいこはクマに出会えねえよ!」
と突っ込んでおきます。
「浦島太郎」
・竜宮の時計の砂は緩々と流れて怪し乙姫の笑み
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「未来短歌会の恥部」「岡井隆のアキレス腱」こと
小田何歩くんです。
・玉手箱という名前のデリヘルの指名アルバム全て白黒
(小田何歩)
おもしろい!
だけど、「白黒」は「モノクロ」にしたほうがよいかも。
好みの問題だと思いますが。
私家版歌集『官源楽』とお手紙、どうもありがとう!
塚本邦雄先生の息子でもある作家・塚本青史さんに見せておきます。
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酒井景二郎さんです。
「浦島太郎」
・海龜を裏返しては涙ぐむあの爺さんもかき消えて凪
(酒井景二郎)
海亀を裏返すという行為に、
爺の無念が集約されています。
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天井桃さんです。
「夕鶴」
・だめんずな奴ほど可愛いものなのと今宵もおつうはせっせと機織る
(天井桃)
>それから私事では御座いますが、この度、「NHK短歌」に投稿した
>歌の内の一首が入賞したとの報せが届きました。
>放送日は9月21日ですが、其方は本名で投稿したので
>また放送日が近づきましたら改めてご報告させて頂きます…。
それはそれは、おめでとうございます!
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富田林薫さんです。
・きまぐれにたすけた亀の背に乗って手榴弾のピン抜けば白煙
(富田林薫)
穂村さんの歌のパロディ。
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☆小朝知らずの1首劇場☆
「浦島太郎」
・割られたる甲羅のなかを見つめつつわれは行かぬと亀に告げにき
(かわら)
「天女の羽衣」
・羽衣を隠したりせず好きだって君の目を見て言えばよかった
(イツキ)
「浦島太郎」
・9時過ぎて学校に来る乙姫の気怠きうなじにキスマアクあり
(憂太郎)
「かぐやひめ」
・美しく生まれたならば私でもあまたの難問男に投げる
(ダンデライオン)
「かぐや姫」
・雲に乗りたとえ吾等を忘れても姿ぞ見せよ秋の夜長は(岸本一眞)
「竹取物語、かぐや姫」
・月姫の奇問難問如何にする月の大奥覗いてみたい
(おはぎ)
・けしゴムの枕のせいで眠そうな一寸法師にマシュマロを買う
(水野加奈)
・桃をむき種をくり出し捨てる夜私の太郎はいつ生まれるの
(イマイ)
・捏造が囁かれてるアポロ計画真実を知るかぐや姫かな
(骸骨マン)
・白髪の一寸法師のお婆さん御伽草子によれば四十(奈楽)
「浦島太郎」
・じいちゃんの部屋の富山のくすり箱トンプクケロリンけむりのにおい
(やすたけまり)
「鶴の恩返し」
・絶対に覗かないでと我が妻が夜ごと機織りするコミケ前
(魚虎)
「一寸法師」
・異形の子なれば勝者となるために水の匂いをかぎつつ進む
(瑞紀)
・急募中仕事内容鬼退治特記事項は船酔い禁止
(あげはた)
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殿堂入り投稿者コーナー
まずは、
あきえもんさんです。
「浦島太郎」
・子育てを終えてひとりで歩く街 玉手箱の紐ゆるりとほどける
(あきえもん)
「かぐや姫」
・あの星を舐めてみたいと駄々こねる娘よ月に帰っておくれ
「舌切り雀」
・引き出物は大きいもんにしやーせと尾張名古屋の義母しゃしゃり出る
名古屋在住のあきえもんさんならではの作品です。
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もはや別格の存在感を漂わせる
鶴太屋さんです。
・金太郎のまさかり暗く冷えゐるに母恋ひのうたは繊(ほそ)く聞こえ来(く)
なぜか寺山修司の映画「田園に死す」の
家出のシーンを思い出しました。
・睡りの底の浦島 罌粟(けし)の咲くごとく竜宮城は四季薫りゐし
・熱き栗爆(は)ぜる刻(とき)いつさるかにの合戦閉ぢて北をし思ふ
・あらぬ世の花さか爺(ぢぢ)のさくらばなひかりに濡れて汝(な)が胸を流る
・夏陽(なつび)の少年頬紅潮したとふれば滾つ瀬い征く一寸法師
『かさこ地蔵』
・雪に雪地蔵の凛たる賜物(たまもの)を憶(おも)へば目深に帽かぶり去る
『かちかち山』
・仔兎の籠見つめをり隠(こも)り沼(ぬ)の狸をさらに殴(う)ちし春雪
『こぶとりぢいさん』
・こぶ取られ頬を裹(つつ)める春風の霊気に満つる嶽(やま)を呼吸す
『鶴の恩返し』
・しまし丹頂憩ふ水の上(へ)機(はた)を織る曾祖母の写真褪せて黄葉(もみぢば)
『おむすびころりん』
・おむすびを臼搗(づ)く白き鼠たち根の国の秋を饒(ゆた)かに踊る
『わらしべ長者』
・藁の代はりにギターを抱(かか)へ放浪のつまづけば気儘な愛欲(ほつ)し
『分福茶釜』
・茶釜に尾の生えしを思(も)えば苦き笑み新茶の馥(かを)りの綱渡り少女
『舌切り雀』
・日向ぼこ黄金(くがね)のごとき麦秋に雀と爺(ぢぢ)の侘びしきなからひ
〜『舌切り雀』へ捧ぐ〜
・こころ羞(やさ)しくスズメ焼きをり頭より齧れば涙の舌滂沱たれ
どの歌にも鶴太屋印があって素晴らしいと思います。
縦書きにして読み直したい歌の数々です。
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松本響さんです。
「一寸法師」
・ぼくたちは一寸法師 太陽も高層ビルも見上げるばかり
(松本響)
「日本むかし話」
・「ムカシムカシアルトコロニジンルイガスンデイマシタ」と語るAI
ちょっとありがちすぎるのでは。
「桃太郎」
・鬼ヶ島連続殺人事件から十五回目の桜が散って
何かの事件をモデルにしているのかもしれませんが、
「連続殺人事件」を「大量殺人事件」に、
「十五回目」を「二千回目」くらいにしたら、
おもしろくなったと思います。
「桃太郎」
・配役が発表されて芝として刈られるまでの三十五日
学芸会ネタもきました。
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異能兄弟さんです。
・玉手箱あけた太郎が目にしたる<後期高齢者医療被保険者証>
・両耳をもがれし芳一立つように落書だらけの郵便ポスト
「削がれし」にしたほうが良いと思います。
「かぐや姫」
・月姫に山口百恵を例えれば三浦友和は月の裏彦
「座敷わらし」
・虐待で死にし連れ子の現れて夜な夜な母の腹を蹴飛ばす
「安珍清姫伝説」
・釣鐘に身を潜めいる心地なりMRI検査にまなこ閉じれば
・鬼たちが悔しまぎれに喰うために赤茄子<桃太郎>は生まれき
なるほど。
赤茄子とはトマトのことです。
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かんなさんです。
「浦島太郎」
・乙姫が竜宮城の奥の間で今宵も食べるスッポンスープ
(かんな)
ほんとうは恐ろしい乙姫。
・砂浜に座り続ける老人の記憶は波にさらわれてゆく
「かぐや姫」
・かぐや姫ぐらいもてたい、真夜中にムーンストーンのピアスをはめる
「桃太郎」
・桃太郎神社でかった御守りを握って義母と一緒に暮らす
なにやら悲しいドラマを匂わせています。
「桃太郎」
・いつの日か主役になってみたいなとお供の猿が読む西遊記
上の句が説明的で惜しい。
猿が『西遊記』を何度も読んでいるというだけで、
孫悟空への憧れは伝わってきます。
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お疲れ様です!
ありがとう!
何か書こうと思ってたけど、忘れました。
では、小・中学生の歌の選歌をしに部屋へ戻ります。
よろしく哀愁☆