2009年09月06日

鶴太屋劇場 第23回

てのひらの海王星

作・鶴太屋


鬱血のリング泡だち韻(ひび)きたれボクサー倒るればまなかひの海


黒き楽譜にくるむトカレフ砂に埋め青年の眸(め)の冬の海荒る


象亀の眸(まみ)に古代の海映るごときゆふやけ拳(けん)かたく矚(み)る


信天翁(あはうどり)白き羽搏つ泥濘や海鳴りくらきおほき曇り日


冬の霓(にじ)たつ楡の天辺(てつぺん)吹かれゐつ遠景に鳴る荒海あをき


星満ちて水甕あふる百日紅(さるすべり)白き花噴き海が呼んでる


俯きて莨火つける 激浪の海鳴り聴きつつ男の背中


海昏れてうつせみのわが繋ぎゐる漁船は涙(なんだ)と汗に饐えをり


昏れて雪 鮟鱇ぶつ切る刃に触れて海辺の焚火のひとり視てゐる


鷹の眸(まみ)くれなゐ走る 碧天は死に満ちたれば海の夏なり


うつくしき溺死者海をさまよふを金貨に刻むウンディーネ恋ふ


太古の素甕に棲みたる蛸のたこやきなり海の底まで流涕したり


石榴狂へる天(あま)つ光に風生まれギリシャの海の夕凪澄めり


絶海にひとり浮きゐる夢を見て露のヴァイオリン弾けば露の音(ね)


音叉鳴る暮春のころは笛吹きて海の上ゆき鯊(はぜ)も釣りたり


春の潮(うしほ)鬱鬱と荒れ船長は阿片に溺れゐき海の泡


むらさきに海鼠(なまこ)暮れゆく冬の日は海の底吹く木枯しの音


白き海光窓辺にうるむ海葡萄噛めば壊れし古時計鳴れり


青銀河は雛罌粟(ひなげし)の束てのひらに海王星はしづかに炎ゆる


渤海より使者来(きた)れりと古文書の紙魚の食ひ跡日本いつ滅ぶ




タイトルと選・笹 公人

お題「海」


posted by www.sasatanka.com at 11:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 鶴太屋劇場 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。