作・鶴太屋
校舎ごと時空を漂流するならばぼくは噛みくだく白き錠剤(タブレット)
グワシして指攣(つ)る日本は花冷えの楳図ハウスを訪なふ神神
あめーばの分裂してゆく夜のシャーレ旧館奥のピアノは透きつつ
東京タワー裡(うら)に鎮座せしUFO覗けばDEVOのさてぃすふぁくしょん
マチュ・ピチュの遺跡しづかに炎えやすく乾季待つこころの花まつり
エッフェル塔離陸する刻(とき)百人の吟遊詩人の黒焦げのギター
世界貿易センターのかけら刃のごときを握りて奔る新聞少年
ジョン・ベリマン詩集にうすく凍りたる雪を払ひて図書館の冬
アラミーダ・ホテルの微塵の空焼けてエリオット・スミスは翳を歌ひき
千枚の翅の顫へる蝶の吻(くち)、塔に縊(くび)れし屍(し)に群がりて
ピサの斜塔きぬぎぬのごとかたむくを裸のままに剥きゐる林檎
夏の港の倉庫に犇く貘たちの夢は凛(さむ)くて一屯(トン)の氷塊
後架わきの早咲きの薔薇 枯草熱のぼくは洟かむ春の館に
大理石にうるはしき接吻(キス)刻みたるタージ・マハルは熱く冷えゐる
麗(うらら)かなるパルテノン神殿の朝焼けは青く燃えつつ眠れる水夫
玉葱齧るごとし眸(ひとみ)に沁みとほる甘き曇天のサグラダ・ファミリア
春は痩せ犬、夏片眼猫 億万の涙(なんだ)を歌ひて万里の長城
素寒貧、胃の底までも風沁みれば皇居の堀の鳰(にほ)裂き啖(くら)へ
タイトルと選・笹公人
お題「建物」
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僕はなんとか生きています<br />
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では.....