2008年11月29日

鶴太屋劇場 第18回

睡りの国のウラシマ 

作・鶴太屋


金太郎のまさかり暗く冷えゐるに母恋ひのうたは繊(ほそ)く聞こえ来(く)

睡りの底の浦島 罌粟(けし)の咲くごとく竜宮城は四季薫りゐし

熱き栗爆(は)ぜる刻(とき)いつさるかにの合戦閉ぢて北をし思ふ

あらぬ世の花さか爺(ぢぢ)のさくらばなひかりに濡れて汝(な)が胸を流る

夏陽(なつび)の少年頬紅潮したとふれば滾つ瀬い征く一寸法師

『かさこ地蔵』
雪に雪地蔵の凛たる賜物(たまもの)を憶(おも)へば目深に帽かぶり去る

『かちかち山』
仔兎の籠見つめをり隠(こも)り沼(ぬ)の狸をさらに殴(う)ちし春雪

『こぶとりぢいさん』
こぶ取られ頬を裹(つつ)める春風の霊気に満つる嶽(やま)を呼吸す

『鶴の恩返し』
しまし丹頂憩ふ水の上(へ)機(はた)を織る曾祖母の写真褪せて黄葉(もみぢば)

『おむすびころりん』
おむすびを臼搗(づ)く白き鼠たち根の国の秋を饒(ゆた)かに踊る

『わらしべ長者』
藁の代はりにギターを抱(かか)へ放浪のつまづけば気儘な愛欲(ほつ)し

『分福茶釜』
茶釜に尾の生えしを思(も)えば苦き笑み新茶の馥(かを)りの綱渡り少女

『舌切り雀』
日向ぼこ黄金(くがね)のごとき麦秋に雀と爺(ぢぢ)の侘びしきなからひ

〜『舌切り雀』へ捧ぐ〜
こころ羞(やさ)しくスズメ焼きをり頭より齧れば涙の舌滂沱たれ



タイトルと選・笹公人

お題「日本昔ばなし」
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