2008年05月20日

鶴太屋劇場 第15回

温泉街で見た基督

作・鶴太屋


深秋の熱き身沁むる空つ風 夢幻のむかうに虎ノ湯炎ゆる 


路地奥の松ノ湯の光(かげ)燦燦と若き阿修羅がずんと湯浴みす


電気湯に浸かれるウナギ犬もゐて青き憤怒の今凪ぎはじむ


泉にて沐浴しゐる水精(ニンフ)らの淡き壁画の白樺の湯


鉱泉宿に泊まれば流離の断ちがたく 小庭に灯る侘助椿


白骨の出湯に浸かれば匕首(ひしゆ)のごとき山稜視えて零(ふ)りくる雪


浅間温泉街をもとほる乞食(こつじき)の白きはだへの基督羞(やさ)し


柚子の湯の浴槽(ゆぶね)に泛かぶわが身体 股間に黒き夜漂はせ


菖蒲湯に芯まで熱く沈みをり 五月の燕の描(か)く自由(フリーダム)


三軒隣ロココ調なる銭湯の煙突のぼれど杳(とほ)きアトランティス


明治生れの祖父と通ひし湯屋も無くかぽーんかぽーんと響(な)る音残る


巨いなる欅の裸身の父の背を湯に矚(み)し記憶も模糊たる冬


青きカランの噴く寒のみづ 隣家(となりや)の老ひの謡ひもいつしか絶えにし


湯煙りに曇る祖父(おほぢ)の眼鏡置く夜光に耀(て)りてそのままにあれ


髪洗ふ妻の哀しみ 一瞬の風の奔流に黒蝶乱(みだ)る


湯屋を出て十字路の夜 洗ひ髪冷えゆくままに蛮歌に泣かゆ


家風呂に浸かりてこぢんまりとゐし弟(おと)を憶へば西瓜のかをり



タイトルと選・笹公人

お題「湯・風呂・温泉」


posted by www.sasatanka.com at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 鶴太屋劇場 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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