2007年12月21日

鶴太屋劇場 第14回

彗星のイマージュ

作・鶴太屋


目醒めれば未開社会の宴なるマンモス炙りて歌ひ啖(くら)へり

電話機のむかうに聴きゐる虹色の石油の時雨過ぎゆく火星

寒月に震へる外郎(ういらう)食ひゐれば月の十字架放つプラズマ

投函せし手紙が届く百年後の築地市場にくれなゐの鮪(まぐろ)

昼餐の胃袋を匍匐前進する隊員想ひ啖(くら)ふレバニラ

巨大ダコに搦めとられし折りも折り司法試験合格通知

ロプロプの棲む森に住むエルンスト訪(おとな)へば銀色の宇宙服

豆タヌキの根付彫りゐる晩冬の小人国(リリパット)への求人打診

テレビ百台燈りてゐたる駅頭の電器店に潜(ひそ)む宇宙難民

空港の扉のひとつ過(あやま)ちて開ければ驟雨に濡れゐたるモア

群青の風につつまれピエロ哭(な)く春の鬱屈のテレパス少女

白魚啜(すす)る青年の夏パンドラの箱の透視を試みむかな

タンギーの黄昏の地を増殖するみだらなオブジェどれも翳もつ

ジョアン・ミロ画集を開けば一滴の涙を蔵し宇宙(そら)ゆく破船

ニュートンを喚び出してゐる交霊の寝室に浮くくれなゐの林檎

かりがねの空を渡れる永遠の銀いろの糞零れこぼれゐき

初夏の巷に転(まろ)べば百匹のピンクの豚が飛びゆきに候(そろ)

砂嵐の真夜の戸外を沈思せりひたひたと湧く火星への郷愁

木星のドリアン熟れれどテレポートする気も湧かず洟をかみをり

メタセコイアの幹を透かして視る太古 人類の記憶が露に濡れゐる

輝ける純正律響(な)る黄金(きん)の宇宙 ステップ軽くフーガを踊る

卵より孵(かへ)りしダリの口髭のアンテナがさす夢なる鮟鱇

石榴をめぐる蜂にも飽きて四次元の樹間に透けるわが身体かな

扉(ドア)より雲がしのびこむ夏 木苺のジャム煮詰めゐる勝利は苦し

星間を渉れる宇宙キャラヴァンの商ふ悲哀の女(ひと)のイマージュ

記憶より青き血滲む月曜日 冥王星に凛(さむ)き玻璃降る

地底の檻の青きランプに照らされてときには燃えあがる猛き麒麟

薄明の冬に手紙(ふみ)焚く 宇宙空間さまよふ薔薇は想ひ出の影

月光の炎えゐる黒き森に彳(た)ち彗星の女(ひと)への繁(しじ)なる恋慕


タイトルと選・笹公人

お題「SF」
posted by www.sasatanka.com at 01:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 鶴太屋劇場 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。