フーテン東京
作・鶴太屋
くるぶしを押へて泣いてゐたつけか武蔵野の薔薇めぐれる墓地で
擦りむいた右膝抱いてきみの目に秋の電車は四谷を過ぎる
放課後の哈爾濱食堂ラーメンのどんぶり捧げて少女匂へり
臭豆腐(ちょーどうふ)齧りつつゆく台北の夜は昔のちりめんの月
新潟土産の越乃寒梅少しづつ減りゆく祖父(おほぢ)の仏壇磨く
浅草でおでんを突つく深秋の淋しきにぎはひチクワを覗く
白骨(しらほね)の湯に浸かりつつスケルトンの人体模型と肩を並べつ
遠野の宿に柳田憶ひて円錐の夜闇の郷(さと)をさまよひ畏る
停電の夜にさみしさ伝はれと受話器に聴いてる風の留萌よ
鮎の香のくちびるそつと夜に捺すきみの想ひに泛かぶ択捉(えとろふ)
東京の海の潮騒さやさやと胸に求(と)むるは青き楽譜ぞ
愛別離の一生(ひとよ)燦たり金沢の汀に崩るる波を見てゐる
柴又に団子頬ばり懐かしむ香具師の口上その背なの風
フーテンと淋しさわかつ上野駅苦き秋刀魚のはらわた想へ
木枯しの抜ける塩尻駅ホーム鯛焼き食(は)めば餡のはみ出づ
祖母(ばば)の舎(や)に弾む風船「トンプク」と昔富山の薬売り在り
タイトルと選・笹 公人
お題:「地名」
2007年09月25日
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