2007年09月25日

鶴太屋劇場 第12回

フーテン東京

作・鶴太屋


くるぶしを押へて泣いてゐたつけか武蔵野の薔薇めぐれる墓地で
 

擦りむいた右膝抱いてきみの目に秋の電車は四谷を過ぎる


放課後の哈爾濱食堂ラーメンのどんぶり捧げて少女匂へり


臭豆腐(ちょーどうふ)齧りつつゆく台北の夜は昔のちりめんの月


新潟土産の越乃寒梅少しづつ減りゆく祖父(おほぢ)の仏壇磨く


浅草でおでんを突つく深秋の淋しきにぎはひチクワを覗く


白骨(しらほね)の湯に浸かりつつスケルトンの人体模型と肩を並べつ


遠野の宿に柳田憶ひて円錐の夜闇の郷(さと)をさまよひ畏る


停電の夜にさみしさ伝はれと受話器に聴いてる風の留萌よ


鮎の香のくちびるそつと夜に捺すきみの想ひに泛かぶ択捉(えとろふ)


東京の海の潮騒さやさやと胸に求(と)むるは青き楽譜ぞ


愛別離の一生(ひとよ)燦たり金沢の汀に崩るる波を見てゐる


柴又に団子頬ばり懐かしむ香具師の口上その背なの風


フーテンと淋しさわかつ上野駅苦き秋刀魚のはらわた想へ


木枯しの抜ける塩尻駅ホーム鯛焼き食(は)めば餡のはみ出づ


祖母(ばば)の舎(や)に弾む風船「トンプク」と昔富山の薬売り在り



タイトルと選・笹 公人

お題:「地名」
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