作・かんな
夕立に溶けたのだろう公園の緑電話は姿を消した
秋の夜の雨音を聴くためにある酒屋の脇の公衆電話
下宿屋のピンク電話は知っている守れなかった約束のこと
受話器から伸びる螺旋は電話魔のDNAに繋がっている
子が巣立ち一人になって電話機の親機と子機を並べて暮らす
受話器からこぼれ続けるクレイジーソルトのような声に埋もれて
廃校の内線1番あの春の卒業式の歌が聞こえる
鳴りかけて鳴り止む電話まっ黒なショールが肩にふわりとかかる
無言電話をかけたいほどの夜がありウォッカの瓶を凍らせておく
夏空に吸い込まれたい午後があり携帯電話の電源を切る
霧雨につつまれながらネコ達が集会をする電話ボックス
誰でもいい声を聞きたい夜がありリカちゃん電話の3番を押す
タイトルと選・笹公人
お題「電話」