作・かんな
四つ辻で猫と自転車ひく僕と制服の君が混ざりあう春
君はまた猫だった日を思い出すネイルサロンの扉を開き
この部屋に君は帰ってこないから猫のなる木を花屋で探す
灰色の仔猫並べば春の日の植物となり光りはじめる
十月の高い空へと猫は飛ぶ、魚の名のつく雲広がれば
晩秋のベンチに座る老人は仔猫のような日溜まりを抱き
散らばった五線譜の上に老猫はト音記号のように丸まる
街角の猫が減るたび夕暮れは闇の方へと傾いてゆく
よろず屋の招き猫の眼光る朝ダム湖へ村は静かに沈む
老人はグレーの猫を抱きかかえアタゴオル行きの列車を探す
ご主人様お呼びですかと猫耳をつけたハクション大魔王来る
黒猫のタンゴタンゴと針は飛び真っ赤な靴は踊り続ける
なめ猫のレターセットは色褪せて「二十年後の私」へ届く
中1の英語ノートに書きこんだgの形に仔猫は眠る
タイトルと選・笹 公人
お題「猫」