2010年03月18日

かんなのうた 第10回

猫のなる木

作・かんな


四つ辻で猫と自転車ひく僕と制服の君が混ざりあう春


君はまた猫だった日を思い出すネイルサロンの扉を開き


この部屋に君は帰ってこないから猫のなる木を花屋で探す


灰色の仔猫並べば春の日の植物となり光りはじめる


十月の高い空へと猫は飛ぶ、魚の名のつく雲広がれば


晩秋のベンチに座る老人は仔猫のような日溜まりを抱き


散らばった五線譜の上に老猫はト音記号のように丸まる


街角の猫が減るたび夕暮れは闇の方へと傾いてゆく


よろず屋の招き猫の眼光る朝ダム湖へ村は静かに沈む


老人はグレーの猫を抱きかかえアタゴオル行きの列車を探す


ご主人様お呼びですかと猫耳をつけたハクション大魔王来る


黒猫のタンゴタンゴと針は飛び真っ赤な靴は踊り続ける


なめ猫のレターセットは色褪せて「二十年後の私」へ届く


中1の英語ノートに書きこんだgの形に仔猫は眠る



タイトルと選・笹 公人

お題「猫」
posted by www.sasatanka.com at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | かんなのうた | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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