2009年09月06日

かんなのうた 第9回

星砂の棺

作・かんな


砂浜にビキニの花を咲かすためイヴは真っ赤な林檎をかじる


海からのバスのシートに思い出のように砂粒こぼれていたり


バスクリンマリンブルーの湯の中にビキニなど着ぬ身を沈めゆく


ただ海を見ていただけの百年を古灯台は静かに語る


防波堤離れて歩くいつまでも梅雨の明けない海の灰色


海の家停車時間は五分ですバナナボートの通過待ちです


地下ラボの液体クロマトグラフィーで正しく海であるか調べる


海行きの最終電車は走りゆく電気クラゲの光を集め


海からの風が吹く時えころじぃえころじぃって風車は廻る


帆船のゆるい航跡追いかけて消えてしまった白いクレヨン


あの海が忘れられないアラフォーの赤名リカから便りが届く


七月の笹舟きらら流れだす天の川から続く海へと


星砂は硝子の壜を棺とし海に還れる日を待ち続け


海の歌うたい続けて男らの皮膚の一部は短パンになる


夕立の海の家にて寝転べば水音ばかり吾にのしかかる


灼熱の砂を踏みしめあの夏は恋する人魚であったと思う


夏空に遊泳禁止サイレンが空襲警報みたいに響く



タイトルと選・笹公人

お題「海」
posted by www.sasatanka.com at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | かんなのうた | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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