作・かんな
砂浜にビキニの花を咲かすためイヴは真っ赤な林檎をかじる
海からのバスのシートに思い出のように砂粒こぼれていたり
バスクリンマリンブルーの湯の中にビキニなど着ぬ身を沈めゆく
ただ海を見ていただけの百年を古灯台は静かに語る
防波堤離れて歩くいつまでも梅雨の明けない海の灰色
海の家停車時間は五分ですバナナボートの通過待ちです
地下ラボの液体クロマトグラフィーで正しく海であるか調べる
海行きの最終電車は走りゆく電気クラゲの光を集め
海からの風が吹く時えころじぃえころじぃって風車は廻る
帆船のゆるい航跡追いかけて消えてしまった白いクレヨン
あの海が忘れられないアラフォーの赤名リカから便りが届く
七月の笹舟きらら流れだす天の川から続く海へと
星砂は硝子の壜を棺とし海に還れる日を待ち続け
海の歌うたい続けて男らの皮膚の一部は短パンになる
夕立の海の家にて寝転べば水音ばかり吾にのしかかる
灼熱の砂を踏みしめあの夏は恋する人魚であったと思う
夏空に遊泳禁止サイレンが空襲警報みたいに響く
タイトルと選・笹公人
お題「海」