作・異能兄弟
産道のごとき通路の先にある個室ビデオのしずかな光
悲しみで汚れた心も当店へ、しみ抜き名人稲積収蔵
宇宙母船(マザーシップ)のごとき大型ショッピングモールいつしか飛び去りゆかん
時計屋に電波時計の溜め息は満ちて師走の街おも苦し
おもちゃ屋の超合金の「超」の字が異様にまぶしかった昭和よ
ほやほやのキノコ雲みたいなシェフ・ハットのせて「洋食 梵(BOMB)」の二代目
大きなる鼻の穴にはミツバチの巣があるという花屋の女
ミッキーとミニーが御影石となり駅ビル地下の墓石屋に笑む
< 店じまいセール > 9年続けたる靴屋ほんまに閉店したり
クリスマス・イルミネーション灯るころ般若心経ながす仏具屋
タイトルと選・笹公人
お題「店屋・店名」