2010年10月16日

酒井ファンタジーセンター 第5回

國道の竹節蟲(ななふし)

作・酒井景二朗


毛だらけの蛾の羽ばたきを思はせる音を響かせ去りゆく單車


しどけなくつぶれた蝉をまたいだら向かひの屋根に秋が來てゐる


太陽に傷つけられた子の夢は尺取蟲で測れるぐらゐ


薔薇十字會の跡地といふ場所に光る蛹がいくつもいくつも


透明な巨大水黽(あめんぼ)あらはれて消えたロプ・ノール湖の水面に


斑猫(はんめう)をさしむけられたあの日から毛拔き迄もが怖くてならない


ラフレシアに噛みつく蟲の數々を集めて作る 囘春藥を


てつぺんにミンミンゼミをとまらせてヤケにはりきるトーテムポール


國道をまたぐ竹節蟲(ななふし)から落ちる少女(をとめ)の涙、裂けた携帶


軒先に蜂の巣下がる家見れば何か家ごと泣いてゐるやうだ



タイトルと選・笹公人

お題「虫」
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