作・酒井景二朗
聯絡網前も後ろも敵だとは母にはとても告げられなくて
學校を燒く火が欲しい 電話線は導火線にはならないものか
どんなにか辛い毎日だつたらう もう動かない錆びたダイヤル
電話機をばらばらにして取り出した磁石を墓に入れてあげよう
昨日迄悲しみなんか知らなかつた 電話よ俺はお前を憎む
「好き好んで肥滿兒になつた譯ぢやない」脅迫電話片手に泣いた
ああ電話詐欺といぢめと陰謀の道具が街を埋め盡くしてゐる
多摩川で休んでゐたら鳴り出した野戰電話は取るべきなのか
一本の電話が僕を狂はせた そして狂つたまま生きてゐる
タイトルと選・笹公人
お題「電話」