2009年03月11日

秀歌鑑賞



「不倫は文化!」

みなさんこんにちは。斉藤真伸です。
この前、クレーンゲームで「リラックマのほっこりカフェボウルセット」を獲得しました。なんだかクレーンゲーム熱がまた再燃しそうです。

前回、長塚節の歌集について、「現在入手可能な本がない」みたいなことを書いてしまいましたが、このブログでもおなじみの歌人・松木秀さんによりますと、短歌新聞社文庫『長塚節歌集』が、現在入手可能だそうです。松木さん、どうもありがとうございました。

 さて、笹師範の『念力図鑑』(幻冬舎)をお持ちの方は、いますぐ「あとがき」を開いてみてください。そこには次のような文章が記されているはずです。

 「本書は、『念力家族』同様、一首一首、一行九字で、三〜四行の表記の仕方にした。『念力家族』は、この表記の仕方も新しいと話題になったのだが、実は北原白秋『桐の花』の初版本とまったく同じ表記の仕方なのである。『桐の花』もまたイラストが挿入されていた。歌集の表記でさえもなかなか新しいものは少ないというのである。」

 今回紹介するのは、笹師範も深くリスペクトしているこの北原白秋です。

 白秋は明治十八(一八八五)年福岡県で生まれ、昭和十七(一九四三)年に亡くなっています。この時、五十七歳ですから当時としても少し短い生涯ですね。しかし、短歌・詩・童謡の世界に、それぞれ大きな影響を与えた人物です。
 歌人としては十七歳のころから作歌を始め、後に与謝野鉄幹らの「明星」に参加(後に離脱)しています。弟子には宮柊二、木俣修といった人たちがいます。宮は「コスモス」、木俣は「形成」をそれぞれ創刊しており、現在でも“白秋系”の系譜は力強く続いています。

 性格は…一口で言えばパンクでファンキーでポップといったところでしょうか(なんだそれ)。まあ、系譜や伝記などを読むとけっこう付き合うのは大変な人だったようですが、それでも多くの人に愛されたところを見ると、やはりそれなりに魅力的な人物だったのでしょう。

 僕が今回、白秋の作品、特に最初期の『桐の花』、「雲母集」を読み返して思ったのは、“白秋って歌の骨格が思った以上に太い”ということです。白秋の作品については、「現実感がない」「思想性がない」という評価がありますが、「ホントかよ!?」という気がします。とにかく言葉がよく選び抜かれているし、きびきびとしていて、読んでいて本当に気持ちがいい。ふにゃふにゃな言葉遣いがない。時には、“写実”が売りの「アララギ派」よりも鋭い描写があるし…。そしてその匂い立つような幻想性…。う〜む、昔の歌人ってすごかったんだな。

 白秋の処女歌集『桐の花』は、大正二(一九一三)年に刊行されました。白秋二十八歳のときです。この本には短歌以外に、散文詩とも歌論ともエッセイともつかない不思議な文章「桐の花とカステラ」が収録されており、これも高野公彦編『北原白秋歌集』(岩波文庫)で読むことができます。

・春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外(と)の面(も)の草に日の入る夕

・かくまでも黒くかなしき色やあるわが思ふひとの春のまなざし

・南風薔薇(さうび)ゆすれりあるかなく斑猫(はんめやう)飛びて死ぬる夕ぐれ

・ゆく水に赤き日のさし水ぐるま春の川瀬(かはせ)にやまずめぐるも

・馬鈴薯の花咲き穂麦あからみぬあひびきのごと岡をのぼれば


 いずれも『桐の花』の作品です。どの歌も描写が鋭い。それでいて、変な力みがないです。いずれもさらっと流すように歌っています。文字通り「歌」のように。そう、この音楽性こそ白秋短歌の大きな特徴です。
 僕が特に好きなのは二首目ですね。「かくまでも」「黒く」「かなしき」と上句は、「か行」の音が力強く響きあっています。それが下句に入ると一転して、「は行」音、「ま行」音が中心となった柔らかい調子になります。この対比が非常に面白い。
 内容的には、現代人が読むとやや気恥ずかしい感じの相聞歌ですが、それは現代人の感情の方が劣化して弱々しくなっているからでしょう。単に「わが思ふひとのまなざし」とするのではなく、「わが思ふひとの春のまなざし」としたところも憎い。

 この歌や馬鈴薯の歌が示す通り、白秋はこの時期激しい恋をしていました。しかし、その相手は隣家の人妻でした。つまりは不倫です。そしてこの当時は「姦通罪」というものがあり、白秋とその恋人の仲は倫理的だけではなく法律的にも許されざるものでした。
 『桐の花』刊行の前年、白秋は「姦通罪」で告訴され、恋人ともども監獄に収監されてしまいます。
 次回は、この事件を詠んだ歌を紹介したいと思います。


posted by www.sasatanka.com at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 秀歌鑑賞(by・斉藤真伸) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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