2009年02月05日

お知らせと「秀歌鑑賞」

笹師範です。

イベントのお知らせが二つあります。

まずはこちら。

「タケシ学院 第4回スペシャル講義」

で講師を務めます!

イベント概要

「少年タケシ」の連載作家が直接指導する、ワークショップ「タケシ学院」の第四回講義!
今回はおなじみのコミック作家によるアニメ・マンガ講座はもちろん、コラム作家による講座も新登場!
「少年タケシ」がそのまま抜け出たような楽しいワークショップです!

コミック講師:白佐木和馬(「ミカンせいじんグリル」)
ピョコタン(「西日暮里ブルース」)
おおたまこと(「3年Bクラス!キャンパチ先生」)
サトウケンジロウ(「onaraどうぶつえん」)
シャチ(「ミュータンとあそぼ!」)
サヲリブラウン(「ごきげん?ミカコさん」)

講師:笹公人(歌人・「家政婦は見タンカ」)、阿部知代(フジテレビアナウンサー)

講師:毛利嘉孝(東京藝術大学助教授・社会学者・「はじめてのDiY」)、ほかゲストあり

[会場]秋葉原UDXギャラリー

[日時]2009年2月14日(土)
?10:30-12:00 ?13:00-14:30 ?15:30-17:00


[対象]小学校1年〜6年生

[参加費]2,000円(税込)

[主催]CANVAS、フジテレビ「少年タケシ」


<参加申し込み>
「CANVAS」のホームページよりお申し込みください。

お子様がいらっしゃる方、ぜひご参加ください!
知代さんは着物でいらっしゃるそうです。


そして、もう一つ。

「笹井宏之さんを偲ぶ会」
が開催されることになりました。
僕も座談会で出演いたします。
皆さまのご参加をお待ちしています。


◇日時 2009年3月20日(金曜・春分の日)14:30〜17:00 (受付開始 14:00)

◇会場 日本出版クラブ会館
東京都新宿区袋町6 TEL 03-3267-6111

◇内容

【追悼座談会】 斉藤斎藤、笹公人、佐藤弓生、加藤治郎(司会)

【短歌朗読】 野口あや子、伊津野重美

*偲ぶ会終了後17:30より「鮒忠」にて笹井宏之さんを語り合う懇親会を開催いたします。(新宿区神楽坂5−34−1)


◇参加費

偲ぶ会 3,000円

懇親会 4,000円


◇参加申込先(お問い合わせ先)

こちらのページからお申し込みください。


◇受付締切 3月10日(火)


◇申込み記載内容

(1)申込みパート
 *下記から1つお選びください。会費は当日いただきます。

A. 偲ぶ会及び懇親会
B. 偲ぶ会のみ        
C. 懇親会のみ      

(2)お名前 所属グループ名

*メールのタイトルは「偲ぶ会参加(お名前)」の形でお書きください。


◇なお、当日は平服にてご出席くださいますようご案内申し上げます。

◇笹井さんの歌集を購入ご希望の方は、BookParkまでお願いいたします。
 
斉藤真伸さんの原稿が届きました。
今回はその笹井くんの歌を鑑賞してくれました。
では、ご覧ください。

_________________________

斉藤真伸です。

「棒とポトフ」

今回取り上げる歌集は、笹井宏之歌集『ひとさらい』(ブックパーク)です。たいへん残念なことに、これが著者の生前に刊行された唯一の歌集となってしまいました。
 笹井さんについては、笹師範から詳しい紹介がありましたから、あまりくだくだしいことは申しません。ただ、ひとつつけ加えるとすれば、笹井さんは長期にわたって病気療養中であったということです。

 「療養短歌」や、「療養所歌人」という言葉があります。結核などの病気で長いこと苦しんでいる人たちが、その病気を主題に歌を詠むことを指します(三省堂『現代短歌大事典』によれば、この言葉が定着したのは第二次大戦後だそうですが)。特に結核患者やハンセン病患者のなかから、多くの優れた歌人が輩出されました。
 己に何の罪もないのに、苦しみを背負い、世間からも一線を画して生きていかなければならないのです。その無念たるやすさまじいものがあります。特にハンセン病患者は、差別的、非人道的な隔離政策にもてあそばれてきました。

 僕の知る限り、笹井さんの作品には、自分の療養生活をストレートに詠んだ歌はほとんど存在しません。しかし、「社会からの疎外感」という点では、先に述べた「療養短歌」の作り手たちと共通するものがあったはずなのです。笹井さんの作風は、一口で言ってしまえば、空想的、非自然主義的リアリティの上になりたっています。これを「現実逃避」といってしまうのは容易いことですが、僕はそうではないと考えます。むしろ笹井短歌の本質は、非現実的世界の彼方に、自分自身の生命力、そして世界への「愛」を再生させようという試みだったのではないか。


・わたがしであったことなど知る由もなく海岸に流れ着く棒

 歌集の冒頭近くに置かれた歌です。「棒になった男」という安部公房の作品があります。平凡に生きていたある男が、その平凡さゆえに徹底的に否定され、侮辱され、嘲笑されるという、実に嫌な話です。このように「棒」というものは、「つまらないもの」「凡庸なもの」「くだらないもの」の象徴としてよく扱われます。
 実はこの歌ですが、底に流れる精神は、近代短歌の伝統的なものを受け継いでいます。すなわち、「自己の卑小さ・矮小さをじっと見つめる」ということです。石川啄木なんて、そればっかやってますよね。この作品も、「わたがし」を「わたくし」と読み替えてみれば、そのテーマははっきりとすると思います。
 また、小道具としての「わたがし」もなかなか面白い。とけてしまったのは、さてどの部分なんだろうと、つい想像力をかきたてられます。三句から四句にかけての「知る由も/なく」という句またがりにも無理がありません。


・それは明日旅立ってゆく人のゆめ こうのとりには熱いポトフを

 「こうのとり」はもちろん「誕生」の暗喩です。「明日旅立ってゆく」を、「誕生」と捉えるか「死」と捉えるかは人それぞれですが、「作者の死」という事件のあとだと、どうしても後者だと考えてしまいます。またその方が、「死」と「誕生」という対比がすっきりと成り立ちますしね。この歌のうまいところは「熱いポトフ」なんて持ち出してきたことです。これによって「こうのとり」のキャラクターが平板なものではなく、ある厚みをもったものに感じられてきます。


・しっとりとつめたいまくらにんげんにうまれたことがあったのだろう

 ちょっとホラーチックな、不気味な歌です。ぜんぶひらがな表記名ところが、かえってその不気味さを引き立てています。僕はこの歌から、「どこへいこうと自分は人間であることから逃れられない」という作者のうめき声を感じました。つまり、「逃げ場所」などこの世のどこにもないのです。どこかへなんとか逃げ込んでみても、そこは「しっとりとつめたいまくら」のような、より閉鎖された場所でしかないのかもしれない。

 笹井さんが亡くなってから、多くの人が追悼の意を込めて、その作品をブログなどで紹介しています。それらを読んで「こんな独り言みたいな歌、おれにでも作れる」と思った人は多いかもしれません。しかし、そう思うのは勝手ですが、実際にはこういう「独り言調」、「非自然主義的リアリティ」の歌を作り続けることは、多大なエネルギーを必要とします。

 どんなにがんばって奔放なイメージ、斬新な言葉遣いを編み出したとしても、読者はだんだんとそれに慣れてきます。しまいには「この人だったらもっとぶっとんだ作品ができるはず」なんて言われたりもします。また、こういう「独り言調」は、世間の常識と「ついて」しまったり、他人の想像力に負けたりすると、たちまち陳腐なものになってしまいます。

・大陸間弾道弾にはるかぜのはるの部分が当たっています

 これも『ひとさらい』の中の一首ですが、失敗作だと思います。「大陸間弾道弾(戦争)」と「はるかぜ(平和)」という対比が、露骨すぎてすごくわざとらしい。作者が自分の発想に酔ってしまったらそこでアウトなのです。「写実的」「自然主義的」な歌を作るのよりも、ある意味ずっと厳しいのです。僕自身も「独り言調」の歌をよく作ってた時期があるんですが、歌の「善し悪し」が、自分自身ではすごく判断しにくかったことを憶えています。

 『ひとさらい』という歌集が、このように実にあぶないバランスの上に成り立っている一冊だということは、ぜひとも留意しておくべきでしょう。「センス」だけで歌を作り続けられる期間は、そう長くはありません。永遠に続くかに思えた言葉の本流も、ぴたっとやんでしまう時期があります。そんな壁にぶつかったとき、この作者はどうするのだろうか。『ひとさらい』という歌集を最初に読んだとき、そのような危惧を強く感じました。

 その答えがでることはもう永遠にありません。だが、笹井さんの作品がこれからどこを目指そうとしていたのか、その答えもまた、『ひとさらい』のなかに隠されているのです。

次回も、笹井さんの残した作品について語りたいと思います。


posted by www.sasatanka.com at 00:04| Comment(1) | TrackBack(0) | 秀歌鑑賞(by・斉藤真伸) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ようやっと今日読みました。(これまで避けていたのですが)<br />
分析とか評論とかまったくできない自分にとって、斉藤さんの評論はとても感慨深いものがあり、静かでクールで大変わかりやすいです。<br />
できればもっと、たくさん分析して欲しいです。はっきり言ってとてもおもしろいからです。
Posted by ダンデライオン at 2009年02月11日 10:06
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