まずはお知らせから。
1月24日(土) 午後1時〜4時
「平成20年度 NHK全国短歌大会」
日 時 平成21年1月24日(土)午後1時〜4時
会 場 NHKホール(東京・渋谷)
主 催 NHK・NHK学園
後 援 文化庁・現代歌人協会・日本歌人クラブ
協 力 NHKエデュケーショナル・NHK出版
が開催されます!
観客席から見るだけでもおもしろいので、お時間ある方は見にくることをお勧めいたします。
うちの師匠の岡井先生とかああいう舞台に上がると凄いオーラを発するので、それも見物ですよ。
ジュニアの部の選者を務めた関係で、僕もちょこっと御挨拶するかもしれません。
楽しみですね!
この大会はお歴々が勢ぞろいする楽屋が緊張するんだよなぁ。
師範が?
うん。隅っこで小さくなってるよ。
たまに岡井ちゃんと世間話するくらいで。
岡井ちゃんて……コラ!!
全然小さくなってねえよ!
冗談はさておき、北島三郎や和田アキ子がいる場所によくわからない新人歌手がいるような状況ですよ。実際。
わかりやすいたとえ。
去年はコワモテの石田比呂志さんに肩を揉んでいただいて、逆に肩が凝ってしまいました……。
それは怖い!
今年もがんばってください。
発売中の絵本専門誌『MOE』2月号(白泉社)
の2008年の絵本ベスト30番外編に
『ヘンなあさ』が選ばれました。
デビュー作にしては大健闘とのこと(本さんのおかげですが)。
この機会に、まだ読んでいないという方はぜひ読んでみてください!
ということで、斉藤真伸さんの「秀歌鑑賞」です!
よろしく哀愁☆
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「日曜の小事件」
斉藤真伸です。
今回、『佐藤佐太郎歌集』を再読して思ったことは、「佐太郎ってスゲー神経質な人だなぁ」ということです。もしかするとこの「神経質さ」が短歌の形に昇華されるときに、あの独特の抒情が生まれるのかもしれませんが。
佐太郎の師匠である斎藤茂吉も、それなりに神経質だったり気難しかったりしましたが、その一方で驚くほど子供っぽい一面がありました。例えば、弟子と一緒に鰻を食べるときは、「おい、キミの鰻の方が大きいから取り換えてくれ」と平気で言ったそうです。普通、仮にも“大家”と呼ばれる人間は恥ずかしくてそんなことは言えませんよ。それなのに茂吉は言ってしまう。弟子たちは慣れたもので、そういうときは「ハイハイ」といってすぐ応じたそうですが。
茂吉の弟子である佐太郎にはそういう形の子供っぽさはありません。その代わり師匠に勝るくらいの感覚の冴えがありました。
・日曜の何するとなき部屋にゐて炭(すみ)はねし時ひどく驚く
処女歌集『歩道』より。昭和十(一九三五)年の作品です。いまもむかしも、一人暮らしの人間の日曜日というものは侘びしいものです。そして「孤独」は、人間の感覚を驚くほど明敏にするときがあります。「炭」はもちろん暖房に使うものですから、季節は当然冬です。寒さも人間の感覚を研ぎ澄まします。「炭(すみ)はねし時」というのは、佐太郎の言葉を借りれば「日常の瑣事」ですが、そんな瑣事が時には人の心にショックを与えることがあります。佐太郎の作品、特に初期のものを読むと、自分たちがいかに「日常の瑣事」を見過ごしているかに気づかされます。
人間の心って絶えず動いているんですよ。そして心が動く瞬間こそ短歌のいい題材なのに、大抵の人間はたちまちにそれを忘れ去ってしまいます。言い換えれば「日常の瑣事」は短歌のいい題材だということです。
・つとめ終へ帰りし部屋に火をいれてほこりの焼くるにほひ寂しも
もう一つ暖房ネタ(?)を。第二歌集『軽風』から。ただしこちらは昭和四(一九二九)年と、前の作品より古いです。これも「ほこりの焼くるにほひ」というごく微細な感覚を中心に据えています。「寂しも」は、ただ単純に「寂しい」と取るのではなく、「人間存在の根本的な物悲しさ」を示していると読むべきでしょう。
・舗道にはいたく亀裂(きれつ)があるかなと寒(かん)あけごろのゆふべ帰路(かへりぢ)
これは『歩道』から。昭和十四(一九三九)年の作品です。「寒(かん)あけ」とは、寒が終わって立春になるころを指します。暦の上では春は始まりますが、まだまだ寒い。たぶん佐太郎はややうつむいて帰路についたのでしょう。必然的に路上に目がいくことになりますが、なぜか道路の亀裂ばかり気になってしまいます。それがわびしい心をますます追いつめていきます。
やたら身の回りの細かいことが気になるときって、実はあんまり幸せなときではないでしょう。うまくいってるときは、細かいことはあんまり気にならないものです。でも短歌(というよりも創作全般)には、「負の感情」を鎮める作用があります。特に声にもならないほど小さい心の中のさけびを掬い取ってくれるのが、短歌という形式なのでしょう。
そういうわけで今回はここまで。
昨日のNHK全国短歌大会では、たいへんお世話になりました。<br />
お歴々が勢ぞろいする楽屋まで連れて行っていただき、緊張しましたが貴重な経験となりました。<br />
これを今後の短歌づくりの糧として精進したいと思います。<br />
ありがとうございました。
<br />
この度は「秀作」おめでとうございます!<br />
とても良い歌でした。<br />
僕が楽屋で撮った伊藤先生とのツーショット写真をお送りしたいので、僕にメールを送ってください。<br />
ますますのご活躍をお祈りしてます。