2010年03月18日

二人の師匠への受賞(章)祝い

sasa-7.gifおひさしぶりです!
生きてますよ。

sasa-5.gifなかなか「総評」にとりかかれず、申し訳ありません。
ちょっと時間のかかる仕事に取り組んでいました。
そのうちの一つが、革命家であり、小説家であり、歌人の
小嵐九八郎さんの第三歌集の「解説」の仕事。
学生運動とかに興味がなかったので、そのへんのことを調べるのにも苦労しました。
小嵐さんはお世話になっている兄弟子(岡井隆門下)なので、がんばりました。
歌集が出ましたら、またお知らせいたします。

sasa-7.gifそんな執筆生活のなか、二つの受賞パーティーに出席しました。

一つ目は、師匠である岡井隆先生の高見順賞の授賞式。

岡井先生は、歌人として極めつつ、
詩集『注解する者 』(思潮社)
でも最高峰の賞である高見順賞を受賞されました。

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快挙です!!
同時受賞は、岸田将幸さん。
史上最高齢と最年少の同時受賞となりました。


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これは別の会の時の写真だけど、僕、岡井先生、小嵐さん。
いつも白い服を着ていらっしゃる小嵐先生のことは、
前科のある妖精と呼ばせて頂いております。

「歌人はアーティストではなくアルチザン(職人)を目指すべき」
と常々おっしゃっている岡井先生ですが、
今回の受賞で、岡井先生はその両方の資質を兼ね備えた
類稀な才能の持ち主であるということが証明されたと思っています。
岡井先生、本当におめでとうございます!!


もう一つは、
敬愛する大林宣彦監督の旭日小綬章受章記念祝賀会
「大林さん、次の映画は まあだ会」

sasa-7.gifこちらはレポ風にいきます。

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会場に入るなり、高橋幸宏さんに遭遇!
つい先日、細野さんの会でお会いしたばかりですが、 緊張しました。
YMOという存在は、自分を思春期に戻してくれます。

幸宏さんは大林映画「四月の魚」で主演、
「天国にいちばん近い島」
では原田知世さんのお父さん役で出演されいます。
いま幸宏さんと知世さんが一緒にバンド(pupa)を組まれていますが、大林映画ファンにとっては感慨深いものがあります。

会場に監督の商業映画デビュー作である「HOUSE」 のサントラ(by・ゴダイゴ)が流れ、パーティーがスタート。

大林映画歴代作品のダイジェストが流れ、
開始早々目頭が熱くなったのでした。

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司会は、南原清隆(ナンチャン)さんと勝野雅奈恵さん
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秋吉久美子さん、三浦友和さん、長門裕之さんなどのスピーチのあと、大林映画歴代出演女優のみなさんが舞台上に勢ぞろい。
壮観でした。

var_20100318025508.JPG 美しき女優のみなさんに囲まれてスピーチする監督。

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発起人のみなさまがご登壇。
日本を代表する各界の重鎮たちが大集結といった印象でした。

錚々たる大先生方に混じって、
なんと小生もスピーチをさせて頂くという展開になり、 本当にドッキリかと疑いました。
その時点で食べ物が口に入らなくなったことは言うまでもありません。
大林監督は、自分のようなわけのわからない自称歌人を買い被ってくださっていて、うれしいやら申し訳ないやら……。

スピーチは、
「その日のまえに」でヒロインの永作博美さんの兄役をやらせて頂いた時
演技について、
「ねらわれた学園」の手塚眞さん以来の謎の怪演と言われているとか、
「時をかける少女」の高柳良一さんを見習ってわざとセリフを棒読みにした(むろんジョーク)
とか話そうかと思ったのだが、
目の前にご本人たちがいたので勇気が出ず、断念。
無難に祝辞を述べさせて頂きました。
緊張のあまり噛んでしまいましたが……。


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「その日のまえに」で、
夫婦役をやらせて頂いた柴山智加さん
当時(2年前)とまったく変わってないです。(変わっちゃ困るって)

var_20100318025629.JPG 監督による貴重なピアノ演奏。
余技の範疇を越えた素晴らしい腕前でした。
大林監督のご人徳を感じる、
祝意に満ちた素晴らしい祝賀会でした。
監督、本当におめでとうございます!!



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異能セントワールド 第8回

オール1伝説

作・異能兄弟


<1週間おためしセット>のサプリ飲み1週間だけ健康になる


顔半分マスクで隠れていてもすぐ誰だかわかる小沢一郎


ナンバー1よりオンリー1って言われても乙女はカロリー0を求める


<一見様大歓迎>と墓石に刻んで祖父は永久(とわ)に眠れり


つぶやきが140字におさまらぬ男ブツブツ街をさまよう


「独り言つぶやく奴に近づくな!」春一番が少女に告げる

 
一青窈気取りで唄う恋人のブーツが臭うカラオケボックス


吸引をされゆく脂肪一キロの余分にも五分の魂はある


有名になる日のために取っておく1、1、1……の並ぶ通知簿


一卵性双生児の姉妹ねがえりを同時にうてば間延びする夜


喜びは小匙3杯、悲しみは大匙1杯の人生が良い 



タイトルと選・笹公人

お題「一(1)」
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かんなのうた 第12回

あの夏の紙石鹸

作・かんな


あの夏の匂いを放つ引き出しの紙石鹸のケースを開く


錆びついた線路に石を置いたこと咎めるような風に吹かれて


靴底の小石と共に言いたくて言えないことを振り落とす朝


川底の石踏みしめて歩くごと十五の君の揺らぐ六月


失ってゆく事をしるポスターの石野真子には八重歯があって


十月の野原が見える忘れ物みたいな形の石を拾えば



タイトルと選・笹 公人

お題「石」
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かんなのうた 第11回

3月の人体模型

作・かんな


セルロイド人形を抱きおかっぱの祖母は五歳の夏の中へと


百体のリカちゃん人形並べられどの体にも空洞がある


さようなら、3月の風は理科室の人体模型の胸を吹き抜け


のびのびと両手をひろげ廃村の田圃の案山子が朽ちてゆく秋


着ぐるみのジッパーを閉めまた時給800円のヒーローとなる


ぬいぐるみ作家の部屋の幾百の眼に睨まれて動けない夜


少年が右足首に眠る夜ナナちゃん人形光を放つ


抱き人形のパンヤほぐせばほろほろと子供の頃の夢がこぼれる



タイトルと選・笹 公人

お題「人形・ぬいぐるみ」
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かんなのうた 第10回

猫のなる木

作・かんな


四つ辻で猫と自転車ひく僕と制服の君が混ざりあう春


君はまた猫だった日を思い出すネイルサロンの扉を開き


この部屋に君は帰ってこないから猫のなる木を花屋で探す


灰色の仔猫並べば春の日の植物となり光りはじめる


十月の高い空へと猫は飛ぶ、魚の名のつく雲広がれば


晩秋のベンチに座る老人は仔猫のような日溜まりを抱き


散らばった五線譜の上に老猫はト音記号のように丸まる


街角の猫が減るたび夕暮れは闇の方へと傾いてゆく


よろず屋の招き猫の眼光る朝ダム湖へ村は静かに沈む


老人はグレーの猫を抱きかかえアタゴオル行きの列車を探す


ご主人様お呼びですかと猫耳をつけたハクション大魔王来る


黒猫のタンゴタンゴと針は飛び真っ赤な靴は踊り続ける


なめ猫のレターセットは色褪せて「二十年後の私」へ届く


中1の英語ノートに書きこんだgの形に仔猫は眠る



タイトルと選・笹 公人

お題「猫」
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新・あきえもんアワー 第27回

正一の票

作・あきえもん


知らぬ間にお昼の森田一義に慣れたのだから宇宙人もきっと



正一に票は一つも入らずに生まれ持っての六票を守る



タイトルと選・笹 公人

お題「一(1)」
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新・あきえもんアワー 第26回

夢見る四十人形

作・あきえもん


グランプリおめでとうその階段を登って人形の家においで


夢を見る人形はもう四十(しじゅう)過ぎ 浅い眠りで夢ばかりの夜


ピノキオが鼻伸ばしつつ人になるステキな呪文は「カイゴノシゴト」


着ぐるみのキティのような子は我の目を避けながらオフクロと云う


待ち人はもう来ないからナナちゃんの汚物のように丸まっている

※ナナちゃん=名古屋駅前の巨大人形



タイトルと選・笹 公人

お題「一(1)」
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鶴太屋劇場 第26回

幽霊桜

作・鶴太屋


デンドロビウム花咲くとみて蟾蜍(ひき)啼けり一陣の風身籠りゐしか


青葉寒 熊の眉間に一撃の銃(つつ)透きとほり水無月の水


さくらばな一花(いちげ)氷れる夢の外溝(どぶ)に映るはネオンの街か


一つ餅火鉢にふくれつつありぬわが窓透かせば濁世の灯(ほ)明り


絶望の火の一滴(ひとしづく)胸に咲き来歴問へば砂はく蜆(しじみ)


詩としての抒情装置は肯(うべな)へど水鶏(くひな)一羽も白く飛ばざる


メタセコイアの一樹陽(ひ)の色真夏日に汗にじむ地(つち)白線ぐいと


くろがねのにほひ流れて一閃の冬雷されば霙(みぞ)れてゐたり


第一志望「血みどろ臓物ハイスクール」の少女吐瀉して時じくの胃痛


海阪(うなさか)に一つ火の玉拝(をろが)みて濁世の穢れ美しく過ぐる


碧落を支へし一日(ひとひ)の無聊なり湯舟の檸檬足もて沈め


幽霊桜のこぬれに招く手が一つ蛇目傘(じやのめ)ぞ差せば黙して通る


一番星枯木にかかるたそがれのあはれほろ酔ひ肝(かん)透きとほる


桐一葉秋に揺れゐる望郷のこころ惨たり眼(め)に降るわくら葉


どの男も一人オートバイ疾駆せり揮発油かをれるアデン・アラビア


冬の果(み)の林檎にナイフ喰ひこませ一人(いちにん)の愛滅び去る見し


野兎の血を垂らしつつ樟の樹の一眼(いちがん)薄(うす)う感じつつある


栗鼠の血の麺麭(パン)に散るとき運河ゆく船一艘のなまぐさき火事


『ロリータ』に一輪の押し花 傘をもて花を薙げども密林の孤独


鯨カツの一切れ口に運びつつ思(も)ふ海のシェパードこそ狂犬か



タイトルと選・笹 公人

お題:「一(1)」
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鶴太屋劇場 第25回

石の脳髄

作・鶴太屋


石に刻む少女(をとめ)風中そのむかし縊れし傀儡女(くぐつめ)の一人かは


飢ゑ充たすとて石ねぶれども舌寒し クヌート・ハムスン忌の紫雲英田(げんげだ)


実石榴の熟るる季節に息吹きかけ琥珀少女(をとめ)のパッション・フルーツ


錐揉みの銀機絶巓をけずりたれば蜘蛛匍(は)ふ石にはしれる白露(はくろ)


大寒の鶏(とり)の蹴上ぐる凍土かなくちびる噛みて漱石の坐(ま)す


石動(いするぎ)の寒の市ゆく葱の香や雉子(きじ)の首提げ哭(な)けり美丈夫


骨壺のうたひをどれり大泉滉(あきら)の父たる黒石(こくせき)の骨


湧き来(きた)る数瞬の霧スコッチ乾(ほ)し石原裕次郎のにがわらひ


魚(うを)の棲む石あるべしや石を売るつげ義春に犬狼星(シリウス)ささぐ


浄夜なり道道の石響(な)り交へば紫水晶(アメジスト)の息吐ける少女子(をとめご)


石廊に花の葬儀のデジャ・ヴュ再(ま)た 砂糖漬けの父ほろにがき母


ギャングたち誰より死ぬる愛に死ね海石榴(つばき)咲く野にかぎろひの骨


オランウータン無心の眼澄みとほり宙(そら)への石段のぼらば楼蘭


祭囃子の記憶遙かに齢(よはひ)ふる 宝石の脳髄(なづき)飴いろに痺れ


墓標踏み倒し末枯(すが)るる故郷かな水晶石のうちの寒鮒(かんぶな)


ギリシアの裔の石殿炎ゆる日を伽藍ささふる女人柱(カリアティド)の黙(もだ)


石窟の画(ゑ)の馬駈くる形(なり)のままつぶらなる眼(め)は夜に濡れゐしか


ジェーン・バーキン歌へば熱のゆりかごに届けよ雪花石膏の詩(うた)


猫目石の釦(ぼたん)澄みたり精霊にゆき逅ひしのちのたかぶる炎


アヴェ・マリア聴きつつ凛(さむ)し石の薔薇けさ渾身の露湛へたる


囀り石のするどき傷や父(てて)なし子ひとり遊びに折る曼珠沙華


逢魔ヶ刻と笑ひて別れひとり蹴る小石のさむしあをき没陽(いりひ)よ


青き鬱のビタミン剤嚥(の)み夜をこめて読むなる明石海人のうた


紫苑雪野のしろたへ被(かづ)き枯れわたる点鬼簿焚けば石川淳の忌


石筆(せきひつ)を売るよろづ屋の世も過ぎて焼き茄子串に刺せば晩涼


石妖に憑かれ石工(いしく)の鑿(のみ)打てる火花と散ればひもじき蛍


根こそぎの夭(わか)き石楠花移し植ゑ鬱金(うこん)の鳥が花に溺るる


月光に碧(あを)き石筍きしりたれ薄氷の湖(うみ)わたる若僧(にやくそう)


娶らざる兄(え)に桜雨ふりそそぎ婚姻色の石斑魚(うぐひ)一尾や


他界の石ノ森章太郎ゑまひつつ草むす脳髄(なづき)のそよぐ少年



タイトルと選・笹 公人

お題:「石」
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鶴太屋劇場 第24回

浜辺のキューピー

作・鶴太屋


露の玉しとどなりけり流し雛暁(あけ)の空ゆけ悲の紺を薙ぎ


冬の浜辺に打ち上げられしキューピーを幻覚しをり位牌を担ぎ


はに丸ののたれ死にをる花野にて白ききのこを踏み躙りゐる


脣(くち)紅きからくり人形茶を運ぶ閑日の机(き)に黄昏の相


おきあがりこぼし倒れて返らぬまま泉水の亀が火を喰ひ散らす


藁人形火に焼(く)べ身命保ちたり二月の寒燈わが貌(かほ)映し


首もげしバービー悼みドーナツ食ふ睫毛きらりと蒼穹を刷(は)き


ぬひぐるみのお腹ほつれてふはふはと六腑真綿の陀羅尼をなぞる


九字切ればペコちやん人形あらはれりわが遠天(をんてん)の祈り揺るがせ


くれなゐの血と肉持てるわれなるかマネキン銃弾撃ちこまれ冬


マネキンに銃痕三つ虚空(そら)が視えぼくがみえちちははがゐる


マネキンの罅割れに舌挿し入れて夜毎堕ちゆくわが海のあり


マネキンに体温ほのと移るとき抱きしめてゐる乳房重たく


手にとりてずつしり重き銃弾と何も見てゐぬマネキンの眸(まみ)


膨らみゆくヒヤシンスの球痛ましく春愁ひのマネキンに備はざる


マネキンの両腕縛る春宵は自涜の花粉に渇きゐしわれ


廃ビルの庫(くら)にぎつしり詰まりゐるマネキンどれもどこかが欠けて


首筋に淡き愁ひの蜘蛛の子とぼくが見てゐる水着のマネキン


マネキンの朱き唇夢に顕ち褪せゆくままに冬ざれのデパート



タイトルと選・笹 公人

お題:「人形・ぬいぐるみ」
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